『酒のほそ道』をはじめとして、四半世紀以上にわたり、酒やつまみ、酒場にまつわる森羅万象を漫画に描き続けてきたラズウェル細木。
そのラズウェル細木に公私ともに親炙し、「酒の穴」という飲酒ユニットとしても活動するパリッコとスズキナオの二人が、ラズウェル細木の人生に分け入る──。
第16回も『酒のほそ道』編。長期連載ならではの悩みや、1杯目グビグビ問題など、今回も充実の内容が展開されます。
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長期連載だからこそ生じる矛盾
スズキナオ(以下、ナオ):仮に時代が少しずれていて、我々が『酒ほそ』初期のころのラズ先生と会っていたら、最初はちょっとこわかったかもしれないですね。
パリッコ(以下、パリ):確かに。「失言したらマズいんじゃないか」とか……。
ナオ:飲みかたがだらしないって怒られそう。
ラズウェル細木(以下、ラズ):でも、初期のイメージでずっときていて、僕のことを「海原雄山」的な厳しい酒飲みみたいに思ってる人がけっこういるみたい(笑)。まぁ、そういう勝手なイメージを抱かれるのもまた、おもしろいっちゃおもしろいんですけど。
パリ:『酒ほそ』のあとがきをナオさんとふたりでやらせてもらったときに書いたんですけど、もう20年くらい前、僕が日記サイトで日記をつけていて、そこに一度、『酒ほそ』の感想を書いた記憶が残ってるんです。それが生意気にも「この漫画、基本的には好きなんだけど、たまに意見が合わないんだよな~」みたいなもので……。たぶん、初期の『酒ほそ』には、「こんな飲み方はイカン」みたいな主張もあったんですよね。それが自分と合わなかったりすると、「あれ?」とか思ったり。
ラズ:(笑) 最初のころのものを今読むと、自分でも「これ違うよなー」とかあるからね。長くやってるんで、見解もだいぶ変わってますよ。そういう矛盾もまた、おもしろさなんじゃないかなと。
パリ:ただもちろん、まるっきり別人になっちゃってるわけじゃなくて、やっぱり、基本はずーっと、飲兵衛なんですよね。
ラズ:そうですね。あとは、「酒」だからこそマンネリが許されるのがすごく楽で。「前と違うんじゃないの?」もそうだけど、マンネリもまた許される。
ナオ:時代ごとの「最近こういう飲みかたがあるらしいぞ」もありだし。
ラズ:本当にお得なジャンルです(笑)。
パリ:わかりやすいところで言うと、10話ですでに秋刀魚を語る話があるんですよね。そうすると、もう次の秋は、シンプルに秋刀魚の魅力を語るわけにはいかないじゃないですか。
ラズ:そう。秋刀魚とか鰹なんてものは季節ごとに取りあげるんですけど、なにかしら切り口を変えないとっていうのはある。その都度あれこれ考えるわけですよ。今回は秋刀魚をふたつに切るのが嫌だって話を軸にしようとか、あるいは大根おろしの量に注目しようとかね。だから「また秋刀魚か」はあっても、まるっきり同じ切り口のものは、さすがにないと思うんだけど……。
パリ:毎年毎年「秋刀魚はワタがうまい!」って言い続けてもなんですもんね(笑)。とはいえ、酒飲みとしてはやっぱり「あぁ、もうこの季節か」って話は読みたい。
ナオ:ですね。それにしてもこれだけ続いていると「どんな秋刀魚を描いてきたっけ?」っていうことはないですか?
ラズ:いや、だからもう、最近は秋刀魚描くのがこわいんですよ……。
パリ:ネタが被らないように、リストやメモみたいなのはあるんでしょうか?
ラズ:ないの。だから、思い出せる範囲でひっくり返して。それ以上は担当の人に探してもらうとか。これだけの量になると大変なんですよ。それってたぶん、『クッキングパパ』とかも一緒だと思うんですよね。
パリ:油断してると同じレシピを描いてしまったり(笑)。
ナオ:だけどもし同じだったとして、それを読者が「同じじゃないか!」って残念には思わなそうですけどね。むしろ「あの回と同じだ!」って喜びそう(笑)。同じネタが今の絵でどんな風に描かれるのか見てみたいほどです。
ラズ:前にやった切り口と全く同じ切り口をあえてまたやってみるっていうのも、できるっちゃできるのか。いいヒントをもらいました(笑)。
パリ:音楽で言うリマスタリングというか。それだけで1冊読んでみたいですよ!
ラズ:ただね、熱心な読者の人って、全部覚えてくれてるんですよ。それを教えてもらっても、こっちが覚えてないことがあったり(笑)。
ナオ:「何巻の第何話のアレは、何巻の第何話と反対のこと言ってますよね?」とか(笑)。
ラズ:聞くのがこわい!
パリ:「こういう飲みかた、食べかたが許せない」みたいな部分も、ラズ先生と一緒に飲ませてもらっている間だけでも少しずつ変化してきたりしてますもんね。
ラズ:うん(笑)。ただ、いまだにちょっと許せないこともありますよ。日本酒は常温が「冷や」だから、冷酒を冷やって言われると、それは違うでしょ、とか。でも最近、だんだん「アボカド」でも「アボガド」でもどっちでもいいんじゃないの、みたいな気持ちにはなってきています。
ナオ:寛容になってる(笑)。
パリ:ラズ先生のエッセイ本『晩酌パラダイス』がすごく好きで、何度も読み返してるんです。それで冷やと冷酒の話は徹底的に頭に入ってて(笑)。あと、カレーの「ルー」っていうのは、粉末とか固形のカレーの素のことだから、カレーライスにかかっているあれは断じてルーではない、とか。
ラズ:語源やもともとの意味を調べていくと、あれがルーのはずはない。
パリ:強いて言えば「カレーソース」と呼ぶべきだと。僕はラズウェル細木原理主義者的なところがあるので、それを知ってしまって以降、カレーのことをエッセイで書くときに苦労が増えてしまって。たとえば、「ちょっとソースが足りなかった」より「ルーが足りなかった」のほうが、一般的には伝わりやすいじゃないですか。でも絶対書かないようにしてます(笑)。
ナオ:そうそう、パリッコさんは「ソース」って書いてましたよね。私なんかは「あれ? ルーじゃないの?」と思ってしまっていました。
ラズ:専門家的な人や、ちゃんとしたテレビ番組では、やっぱルーって言わないですね。ただあれもね、最近自分が言わないだけで、人が使うのはいいんじゃないかと(笑)。というか最近は、「カレー」でいいんじゃないかと思う。カレーとライスだからカレーなわけで、あれはカレーなんですよ。
パリ:おお! ここで情報がアップデートされました。いやでも、「カレーが足りなかった」もちょっと伝わりにくいよなぁ。う〜ん……(笑)。
ナオ:居酒屋に「ルーのみ」ってメニューがあったりしますよね。そういう場合、ラズウェル細木原理主義者的には、固形のルーが出てきても怒れない。
ラズ:あれをかじりながら飲む。
ナオ:「そうそう、これこれ」みたいに強がって(笑)。
パリ:でもラズ先生は、それが出てきても怒らなそうっていうところがありますよね。
ラズ:いや、それは、ほんとに出てきたらおもしろすぎるでしょう(笑)。
「1杯目のグビグビが見たいんだ!」
ラズ:まぁでも、酒場に関してはある時期から「どんなことがあってもネタになるからいいや」って思えるようになりました。昔いろいろ怒ったりしてたのって、自分が純粋な客だったときの感想をそのままストレートに描いてたのかなって。ただそれって、良く言うと寛容になってるんだけど、悪く言うと感覚が鈍っていってるのかなと思う部分もある。あとね、お店やお酒の会社の方なんかと親しくなってくると、どうしても「この内容、ちょっと忖度しちゃってるかなぁ?」と不安になったりもしますよね。
ナオ:「過剰に褒めすぎてしまってないかな?」とか。
ラズ:そうそう。昔もね、ジャズに関して言いたい放題だったのが、レコード会社の人やジャズ喫茶の店主と親しくなってくると、やっぱり切れ味が鈍ってくるというのがあった。やっぱりいろいろな内部事情がわかってしまうと、逆につまらなくなる部分というのはあるんじゃないかなと思いますね。そのへんの兼ね合いがだんだん難しくなってくる。
パリ:そういうの、僕レベルでも考えてしまうので、ラズ先生の苦労は計り知れません。逆に、読者のことを意識しすぎてしまうなんてことはないですか?
ラズ:読者の意見は、ありがたく取り入れさせてもらうことのほうが多いかな。今まででいちばん参考になって守っているのは、「汚いものを出さないでほしい」っていうもの。初期はわりと、酔ってゲロゲロとかっていうシーンも描いてたんだけど、「読みながら酒を飲んでいるので……」という話を聞いて「確かにそうだ」と。たとえばトイレに立つシーンがあっても、トイレそのものは出さないとか。
パリ:二日酔いやトイレ事情なんて、酒あるある盛りだくさんのゾーンだけど。
ラズ:小便器の中に氷が入ってるみたいなのも、やっぱりビジュアル的には描かないほうがいいかなあと。ネタとしてはおもしろいんですけどねぇ。
パリ:あと、以前にラズ先生から伺って「なるほど!」と感動したのが「その日の1杯目を美味しそうに飲むシーンをちゃんと描く」っていう。
ラズ:そうなんですよ! 1杯目のコマなんてマンネリもいいとこだよなと、ずっと思ってたんです。でも「最初のグビグビが見たいんだ!」って言ってもらって、じゃあ力をれて描こうと。
パリ:やっぱりどこまでも、飲兵衛のための漫画なんですね。
ラズ:当初は読者の方が「読みながら飲む」ってところまでは想像してなかったんです。だけど多くの方がそれをやっているらしいと耳にして、自分でも一度、もう内容を忘れてるような昔の巻を持ってって、実際にやってみた。そしたらねぇ……楽しいんですよこれが! みなさんこれをやってたんだな、と。
パリ:(笑) 今回お話を聞くにあたり、『酒ほそ』を一気に読み返したんです。そしたら、朝も夜中も関係なく、ムラムラとなんか食べたくて酒が飲みたくてどうしようもなくなってくるんですよね。「もう寝ようと思ってたのに!」みたいな。それがかなり辛かった……。
ラズ:やっぱり飲み食いは漫画のいちばんの肝なので、そういうシーンは必ず入れるし、がんばって描くところですからね。でも、料理は昔のほうが真剣に描いてましたねぇ……(笑)。
パリ:でも、前に飲み友達が言ってたんですが、「ラズ先生の絵は、昨今のグルメ漫画の写真のようなリアルな絵じゃなくて、シンプルな線で美味しそうに見せているのがすごい」っていう。
ラズ:ありがたいです。たとえば、おにぎりって、ごはんをひと粒ひと粒ていねいに描けば描くほど、美味しくなさそうになっていくんですよね。その対極が、柳沢きみお先生の『大市民』で描かれる食べもの。「これでいいの?」ってくらい適当に見えるときもあるんだけど、登場人物が「これだよこれ!」って大喜びして食べてると、ものすご〜く美味しそうに見える。そういう意味で、漫画のなかの食べものや飲みものって、記号に近いんじゃないかな。美味しそうに見せてるのは、具体的な絵そのものよりもシチュエーションだったりするんですよね。
パリ:そのほうが、過去の自分の美味しかったものの記憶にも直結しやすいですね。
ナオ:読者の脳裏にその人なりのおにぎりが浮かぶ。
ラズ:特に、純粋なグルメものじゃなくて酒ものの場合は、状況とか季節とか気分が重要なので。それこそ、旬のつまみと酒があるだけで、けっこう成立しちゃうところがある。あらためて、おいしいジャンルですよ(笑)。
パリ:1巻にだいたい、春夏秋冬の1年ぶんが入ってるんですよね。
ラズ:そうです。年に2巻出るペースなので、1巻に四季をすべて入れることにしています。6月と12月に出るから、「この話は次の単行本のためにとっておこう」という作業が出てくるんですよね。だから『週刊漫画ゴラク』に掲載された順番通りに収録しているわけじゃないんです。
パリ:あまりに自然すぎて気づいてませんでした!
ラズ:ただ、かすみや松島さんと宗達との関係性に進展があったりする場合は、そこを前後させないように気をつける必要がある。1回、かすみが髪型を変えたことがあって、単行本に入れるにあたってどういう順番にすればいいかを考えるのがすごく大変だったんですよ。だから、髪型を変えるのはもうやめようと(笑)。
ナオ:サブタイトルの「酒と肴の歳時記」というのは、最初から決まっていたんですか?
ラズ:ですね。コンセプトもその通りの内容ですから。そうそう、このタイトルロゴは、自分で作ったんですよね。
パリ・ナオ:そうだったんですか!
ラズ:たいていこういうのってデザイナーさんに作ってもらうと思うんだけど、これだけは自分で作った。今でも、それなりに雰囲気出てるなぁと思ってます。
パリ:これぞ『酒ほそ』っていう世界観です。そういえば、5巻までの表紙には宗達がいないんですよね。
ナオ:そうそう! それまでは酒や料理の写真だけっていう。
ラズ:だからこれ、一見漫画に見えないんですよ(笑)。
ナオ:確かに。料理本と言われてもおかしくないような。
ラズ:やっぱりね、キャラクターが表紙に出たほうが絶対にいいですよ。
パリ:最初は「酒と肴の漫画」ということで幅広くいろんな人に興味を持ってもらおうという狙いだったんでしょうか。
ラズ:ですね。それで、宗達というキャラクター自体がだんだん受け入れられてきたから、表紙に出そうってことになったのかと。
ナオ:宗達の顔や雰囲気も、最初と今ではかなり違いますよね。
ラズ:それはもう、長い漫画はみんな違うからねぇ。
ナオ:でも思ったより早く、わりと可愛い雰囲気の宗達に変わりますよね。2、3巻くらいにはもう。
ラズ:さらに等身がものすごく小さくなった時代もあって、読み返すとびっくりします。
パリ:今はちょっとデフォルメされたくらいの自然な感じで。
ラズ:『美味しんぼ』だって絵柄はむっちゃ変わりますからね。山岡も栗田さんも全然違うっていうね。
パリ:そうか。『美味しんぼ』や『こち亀』と比べたら、全然ずっと、宗達は宗達ですね(笑)。
「酒の穴」の道はすべて『酒ほそ』に開拓されていた
パリ:それから必ず聞きたかったのが、数年前から僕とナオさんが「酒の穴」というユニットを作って、いろいろとちょっと変わった飲みかたをしてみようみたいなことを始めたじゃないですか。そこでやってきたことが、実は全部『酒ほそ』に描かれていたという事実について! たとえば僕らが、折りたたみ椅子を持って外に行って、好きなところに座って飲むだけという「チェアリング」を始めたのが2016年だったんですけど、『酒のほそ道』の3巻で、宗達がすでにしれっとやってるんですよね。
ナオ:「ワイン日和」(第3巻5話)っていうエピソードで。
ラズ:椅子を小脇に抱えてね。いや~かわいいいな、この宗達(笑)。
パリ:こういう斬新な飲みかたのアイデアは、初期からたくさん登場しますよね。たとえば7話目にはすでに、どこか目的地があるわけではなくて、ただ電車に乗って飲むだけという、ラズ先生界隈ではおなじみの遊び「ロマ弁」らしきものが出てきたりとか。
ナオ:思いっきり電車で飲んでますよね。
パリ:ワンカップ10杯飲んでます(笑)。
ラズ:初期のころは、やっぱり漫画だし、フィクションだから、わりと攻めたシチュエーションや、オーバーな表現をやってたりするんですよ。そもそもこんなに連載が続くと思っていなかったし、言いたいことはその都度ぜんぶ出していこうみたいな感じで。ノリノリで描いているから濃いですよね。その後だんだんと、体験してないことは描けなくなってきたけど、あのころは大胆だったよなぁと。
ナオ:電車でここまで飲み食いできるっていうのも、時代の変化もあるんだろうけど、それにしても、ライターでイカを炙ってるし(笑)。
ラズ:今は絶対描けないですね(笑)。
パリ:柿の種も炙ってましたよ。
ナオ:「柿の種なども しょうゆがコゲて香ばしく」って書いてありますね。
ラズ:えっ! そんなことも書いてたのか……。
パリ:たとえば池波正太郎先生であるとか、いろんな偉大な酒飲みの先人の方がいて、みんなそれぞれにいろいろなこだわりがありますよね。で、僕らからすると、「唯一こっちならまだ道がないんじゃないか?」っていう部分を、ラズ先生に全部開拓されていて(笑)。
ナオ:我々が「これはおもしろいはず!」と思いついたつもりでいたことが、全部すでに描かれている……。
パリ:別に僕らは『酒ほそ』を意識してやったわけじゃないんだけど、全部やられてて、「そうか、オレたちはお釈迦様の手のひらの上で踊らされていただけだったんだ」って気づくみたいな(笑)。
ラズ:でもね、初めてチェアリングの話を聞いたとき、確かに描いてたんだけど、それをすっかり忘れてたんです。とにかく忘れちゃう。で、「それはおもしろそう!」なんて。でも、忘れちゃったほうが「こっちが先にやったのに」とも思わなくていい(笑)。
パリ:(笑) そういうアイデアって、自然に出てくるんでしょうか。
ナオ:初期のころなんて、居酒屋で普通に飲んでる話のほうが少なく思えるぐらいですよね。
ラズ:自分はアウトドアで飲んだ経験なんか少ないのに、やたら宗達がアウトドアで飲んでるんだよね(笑)。
ナオ:今まで伺ったお話と照らし合わせると、当時は仕事と育児に明け暮れていたころですよね?
ラズ:実際はそうなんです。だからかえって「アウトドアで飲んでる宗達はいいなぁ」みたいな思いで描いてたのかもしれないですね。それにしても、読み返すと、昔は気力があったんだなぁと思いますよ。ちゃんと背景も描いてるし、鉄道が出てくればちゃんと描いている。前も言ったけど、鉄道にうるさい人から「『酒ほそ』の鉄道はちゃんとしてる」みたいなことを言われたことがあって。今はね~、気力ないんですよ……。やっぱり初期には、勢い、意欲を感じますよね。
ナオ:それにしても、1話ずつのアイデアがほんとうに多彩でおもしろい。具体的に気になるシーン、たくさんありますよね。
パリ:いっぱいありますよ! これなんか伝説級のページだなと思うんですけど(1巻第22話)。
ナオ:僕もちょうどそこを見てました! 宗達が酔っぱらっているときの表現ね。
パリ:もうね、泥酔というものを描ききってるんですよ。そして、気づくと家にいるんですよね。もちろん着替えなんかせずに、床に寝っころがってる。
ラズ:最後の力で、なんかベルトを外してて、ネクタイも伸ばしてあって、靴下も脱げかかってる。
パリ:脱ごうとした意志は感じる(笑)。
ナオ:酔っぱらったときって本当にこんな感じですもんね。酔うっていうのはつまり、コマの枠がぐにゃぐにゃになるっていうことなんだって思いました(笑)。表現として本当にすごいと思います。
ラズ:確かに、これはいいコマ割りだなぁ。今、このページを見て勉強になりました。表現をもっとがんばろうって(笑)。
(次回、6月27日更新予定)
ラズウェル細木
1956年、山形県米沢市生まれ。食とジャズをこよなく愛する漫画家。代表作『酒のほそ道』は四半世紀以上続く超長寿作となっている。その他の著書に『パパのココロ』『美味い話にゃ肴あり』『魚心あれば食べ心』『う』など多数。2012年、『酒のほそ道』などにより第16回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した。米沢市観光大使。
パリッコ
1978年、東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、他。酒好きが高じ、2000年代後半より、酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『天国酒場』『つつまし酒』『酒場っ子』『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』など多数。
スズキナオ
1979年、東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『メシ通』などを中心に執筆中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『関西酒場のろのろ日記』『酒ともやしと横になる私』など、パリッコとの共著に『酒の穴』『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』『“よむ"お酒』がある