パリ・オペラ座 ― 響き合う芸術の殿堂
アーティゾン美術館

アート|2022.12.5
文=渡辺真弓(オン・ステージ新聞編集長、舞踊評論家、共立女子大学非常勤講師)

世界最古、約360年の歴史を誇る、 オペラ&バレエの殿堂

 東京・京橋のアーティゾン美術館では、11月5日から2023年2月5日まで3ヶ月にわたって、「パリ・オペラ座― 響き合う芸術の殿堂」と題した大規模な展覧会を開催中。
 パリ・オペラ座は、17世紀にルイ14世によって創立された、世界最古約360年の歴史を誇るオペラ&バレエの殿堂。この足跡を「総合芸術」の観点から浮き彫りにしたのが、今回の展覧会である。

パリ・オペラ座ガルニエ宮内観 © Jean-Pierre Delagarde / Opéra national de Paris

 展示品は、フランス国立図書館をはじめとする国内外のコレクション約250点。オペラとバレエ両サイドから、オペラ座の多面的な魅力を一挙に展望できる機会はそうはないだろう。6階と5階の2フロアにまたがっているので、じっくり時間をかけて鑑賞したい。

展示構成は序曲から第Ⅳ幕、エピローグまで。 時間をかけてゆっくり見たい充実ぶり

 全体の構成は、「序曲:ガルニエ宮の誕生」からスタートし、第Ⅰ幕から第Ⅳ幕で、17世紀から21世紀までの歴史を順に辿り、「エピローグ:オペラ・バスティーユ」で締めくくるもの。あたかもパリ・オペラ座でオペラやバレエを見ているような気分に浸らせてくれる。
 それでは、順に見所をご紹介。 

 序曲:ガルニエ宮の誕生

 ガルニエ宮の設計者シャルル・ガルニエの肖像画や、本展覧会のフライヤーの表紙にある1875年1月5日ガルニエ宮の落成式のグワッシュなど、開場に因んだコレクションが出迎える。現在のマルク・シャガールの天井画以前のジュール=ウジェーヌ・ルヌヴーの天井画が間近に見られるのも嬉しい。

シャルル・ガルニエ《パリ・オペラ座(ガルニエ宮)のファサード立面図、1861年8月》1861年、フランス国立図書館  ©Bibliothèque nationale de France
ジャン=バティスト=エドゥアール・ドゥタイユ《オペラ座の落成式、1875年1月5日》1878年、オルセー美術館(ヴェルサイユ宮殿に寄託) Photo ©RMN-Grand Palais (Château de Versailles) / Gérard Blot/ distributed by AMF

 第Ⅰ幕:17世紀と18世紀

 “太陽王”ルイ14世や“舞踊の神”オーギュスト・ヴェストリスの肖像画に、ジャン=フィリップ・ラモーのオペラ・バレエ『レ・パラダン』等の自筆譜、大プリマ、マリー=マドレーヌ・ギマールの胸像など貴重なコレクションがずらり。

第Ⅰ幕 展示風景 撮影:木奥惠三

 第Ⅱ幕:19世紀[1]

 ジャコモ・マイアベーア作曲のオペラ『悪魔のロベール』からのリトグラフ、名花マリー・タリオーニの肖像や手紙、パスポート、カルロッタ・グリジの肖像、『ジゼル』の台本等々、ここはロマンティック・バレエの楽園。タリオーニ所有のサテンのトゥ・シューズも。

フランソワ=ガブリエル・レポール《悪魔のロベール、第5幕第3場の三重唱》1835年、フランス国立図書館  ©Bibliothèque nationale de France
アルフレッド・エドワード・シャロン《『パ・ド・カトル』を踊るカルロッタ・グリジ、マリー・タリオーニ、ルシル・グラーン、ファニー・チェリート》1845年、兵庫県立芸術文化センター 薄井憲二バレエ・コレクション

 第Ⅲ幕:19世紀[2]

 エドガー・ドガのコーナーでは、有名な『バレエの授業』の油彩画のほか「踊り子」の彫刻が多数。エドゥアール・マネの『オペラ座の仮面舞踏会』と『オペラ座の仮装舞踏会』を並べて見られるのも本展ならでは。
「ジャポニスム」をテーマに、『夢(ル・レーヴ)』のポスターや『イェッダ』の資料等の展示室もあるので、見逃せない。

エドガー・ドガ《バレエの授業》1873-76年、オルセー美術館  Photo © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF
《『タンホイザー』初演のポスター》1861年、フランス国立図書館  ©Bibliothèque nationale de France
エドゥアール・マネ《オペラ座の仮装舞踏会》1873年、石橋財団アーティゾン美術館
エドゥアール・マネ《オペラ座の仮面舞踏会》1873年、ワシントン、ナショナル・ギャラリー

 第Ⅳ幕:20世紀と21世紀

 まずバレエ・リュス関連の展示が素晴らしい。名プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフの私物から公演ポスター、プログラム、舞台美術等々。タマラ・カルサヴィナの『火の鳥』やイダ・ルビンシュタインの『シェエラザード』を描いたジャック=エミール・ブランシュの油彩画を見ているだけで、夢の世界に誘われる。
 シャガールの天井画の習作や藤田嗣治のエッチング等も貴重。
 ルドルフ・ヌレエフの『シンデレラ』で使用された森英恵デザインの靴や毛利臣男による『白鳥の湖』の女王の衣装も必見だ。

レオン・サモイロヴィッチ・バクスト《『シェエラザード』でのイダ・ルビンシュタインの髪飾り》1910年頃、フランス国立図書館  ©Bibliothèque nationale de France
第Ⅳ幕 展示風景 撮影:木奥惠三

 エピローグ:オペラ・バスティーユ

 オペラ座の栄光を巡る旅もそろそろエピローグ:オペラ・バスティーユに。第Ⅳ幕とエピローグに設置された映像コーナーで、『白鳥の湖』や『ロミオとジュリエット』『優雅なインドの国々』等のビデオをゆっくり鑑賞して、余韻を味わいたい。

 ※展示品には、兵庫県立芸術文化センターの薄井憲二バレエ・コレクションからの出品も数多い。
 ショップでは、370頁の豪華カタログやパリ・オペラ座直輸入のグッズ等が販売されている。

アーティゾン美術館外観 撮影:木奥惠三

【開催概要】

パリ・オペラ座 ― 響き合う芸術の殿堂

会場:アーティゾン美術館 6・5 階展示室
会期:2022 年 11 月 5 日(土)~2023 年 2 月 5 日(日)
開館時間: 10:00 ―18:00(毎週金曜日は 20:00 まで)
*入館は閉館の 30 分前まで
休館日: 月曜日(1 月 9 日は開館)、12 月 28 日~1 月 3 日、1 月 10 日
入館料(税込): 日時指定予約制 ウェブ予約チケット 1,800 円、当日チケット(窓口販売)2,000 円、学生無料(要ウェブ予約)
*当日チケット(窓口販売)はウェブ予約枠に空きがある場合に販売/中学生以下の方はウェブ予約不要/この料金で同時開催の展覧会を全て観覧可。
*開催情報は予告なく変更となることがあります。

〒104-0031 東京都中央区京橋 1-7-2
問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

美術館公式サイト:https://www.artizon.museum

おすすめの本

●『パリ・オペラ座バレエ』
アイヴァ・ゲスト 著 鈴木晶 訳 (平凡社)
定価=3300円(10%税込)

世界最古のバレエ団はどのように350年を生きたか。時代背景と共に舞台監督やダンサーの交代劇を克明に辿った初の本格的な歴史書。
詳細はこちら

おすすめの本

●『まいあ Maia-SWAN actⅡ-』
有吉京子 著(平凡社)
最新刊 第7巻 2022年12月発売!
定価=770円(10%税込)
詳細はこちら

●『まいあ Maia-SWAN actⅡ-』
全7巻セット[特製ポストカード4枚入り]
定価=4906円(10%税込)
詳細はこちら

バレエ漫画の金字塔、有吉京子の『SWAN―白鳥―』の主人公・真澄の愛娘まいあが活躍する次世代編ストーリー。舞台はパリ・オペラ座。世界最高峰のバレエ団のエトワールを目指すまいあは、パリ・オペラ座バレエ学校でライバルたちと切磋琢磨しながら、自分と向き合い夢に向かって成長していく――。


RELATED ARTICLE