懐かしい未来の乗り物

暮らし|2021.7.27
別冊太陽スペシャル『日本路面電車地図鑑』編集部

レトロ×フューチャーな街の顔

わたしたちは、久しく忘れてはいないだろうか。かつて、日本中の街に路面電車が走っていたことを――。第2次世界大戦後から1950~60年代半ばにかけて、全国各地で活躍した路面電車は、やがて高度経済成長期のモータリゼーションに押されて都市交通の厄介者とされ、つぎつぎと廃止に追い込まれていった。しかしながら、近年、地球温暖化対策として温室効果ガスの排出抑制が叫ばれるなか、少しずつその価値が見直され、路線が復活したり延長されたりする動きが世界中で広がっている。

敗者から一転、復権を果たした路面電車は、もう元のままの姿ではなくなっていた。コンパクトシティの切り札である、LRT(次世代型路面電車システム)やトラムトレイン(軌道線から鉄道線へ直通運転する路面電車)といった新しい交通を実践する装置として、さらにはMaaSへの導入にも期待がかかるなど、持続可能な社会に軽やかにフィットするフューチャリスティックな乗り物へと変容を遂げた。いっぽう、地域によっては100歳近い車両がいまだ現役で活躍しており、伝統と革新が街中で交差する僥倖に出会えるところも、鉄道ファンや旅好きの胸を打つ。

路面電車が呼び覚ます街の歴史

本書の前半では、現存する路面電車18事業体(※)の路線を、解説と車両図鑑とともにご案内する。どの路線にもそれぞれに土地の物語があり、市民との相思相愛が一日にして成ったものではないことがよくわかる。詳細な路線図に加えて、「電停」がつなぐ観光ポイントの紹介もあり、実際的なガイドとしても有用だ。

そして後半の「廃線路面電車マップ」では、残念ながら廃止されてしまった路線を、「カシミール3Dスーパー地形」を使った地図上に再現。東京都電や、横浜・名古屋・京都・大阪市電など大都市の市電はもとより、北から南まで、今はなき路面電車の廃線跡を辿ることができる。何より地図まわりに満載された懐かしいモノクローム写真が、意識下に眠っていたあなたの路面電車愛を、突如として呼び起こしてしまうに違いない。

※ 本書では、18事業体に江ノ島電鉄を加えた19事業体の路線を「現役路線」としてとりあげる。

別冊太陽 スペシャル
日本路面電車地図鑑


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