最澄と天台宗のこころ

別冊太陽|2022.1.27
別冊太陽編集部  写真|比叡山山上山下図屏風(部分)江戸時代 滋賀・滋賀院蔵

日本天台宗の祖・伝教大師最澄の生涯をたどり、 比叡山に花開いた仏教文化を知る。

日本天台宗を開いた最澄(766または767~822)は、近江国滋賀郡大友郷(現在の大津市坂本)に生まれ、幼少より学問に秀でた聡明な子供だったという。信仰心の篤い両親の支えで13歳で出家し、15歳で得度、20歳で東大寺で具足戒を受けて正式な僧侶になった。通常なら奈良に残るか修業した寺に戻るところ、最澄は比叡山に入り、12年間山林修行に籠ったのだった。

比叡山より琵琶湖をのぞむ(滋賀県大津市) 撮影・堀内昭彦

比叡山に入山した最澄は、一乗止観院として現在の延暦寺根本中堂を創建した際、山内の木からご本尊の薬師如来を刻んだ。延暦7年(788)、最澄がご本尊の宝前に、国家の安寧と一切の生きとし生けるものの幸せを願ってかかげた「不滅の法灯」は、1200年間一度も消えることなく灯され続けている。

不滅の法灯(比叡山延暦寺・根本中堂) 

最澄の教えは、多くのすぐれた弟子たちに受け継がれて総合的な体系として諸宗派を開いた。比叡山に花開いた仏教文化が生んだ、天台の仏像の名品が受け継がれている。この明王院に伝わる「千手観音菩薩及び脇侍像」は、観音菩薩・不動明王・毘沙門天の三尊形式。平安時代後期の華麗な作風で重要文化財に指定されている。

千手観音菩薩及び脇侍像 平安時代 滋賀・明王院 重要文化財

延暦寺の根本中堂は平成28年(2016)から10年計画で大改修が行われている。本 堂の屋根や廻廊屋根の葺き替え、堂内堂外の塗装彩色の修理など多岐にわたる。 特に本堂廻廊あわせて100に及ぶ蟇股彫刻は、再建当初の彩色や意匠を全て調査 した上で、鮮やかな彩色に甦らせることを目指している。

改修中の根本中堂 屋根は全面的に葺き替えられ、再建当初の栩(とち)葺きに戻される。 撮影・堀内昭彦

伝教大師1200年大遠忌を記念して、特別展「最澄と天台宗のすべて」が2月8日から3月21日まで九州国立博物館で開催される。天台宗の始まりからその教えの広がり、天台思想が生んださまざまな文化を、貴重な文化財や名品で展観する。この後、京都国立博物館でも4月12日から5月22日まで巡回される。両方の会場ごとに特色とみどころがあり、この機会にぜひ足を運びたい。

別冊太陽『最澄と天台宗のこころ: 伝教大師1200年大遠忌記念』


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