宮沢賢治 ほんたうのさいはひは一体何だらう

別冊太陽|2023.11.8
別冊太陽編集部

 別冊太陽10月の新刊は『宮沢賢治──ほんたうのさいはひは一体何だらう』です。

 実は別冊太陽で宮沢賢治を特集するのは、これが3度目になります。
 1度目は1985年。別冊太陽の50号記念として『宮沢賢治 銀河鉄道の夜』を刊行。「銀河鉄道の夜」のみで丸々1冊を編集した本書は、天沢退二郎さんと別役実さんの対談や、「銀河鉄道の夜」の街絵図を作成するなど、力のこもった内容になっています。
 2度目は2014年。没後80年を機に刊行された『宮沢賢治──おれはひとりの修羅なのだ』。こちらは、賢治研究の第一人者である栗原敦さんと杉浦静さんを監修に迎え、評伝的な内容や資料などが充実した、決定版的な入門書です。
 そして今回……。3度目の特集を作るにあたり、過去の特集とどう違いを見せていくか……。そんな生みの苦しみから編集がスタートしました。

 まず考えたのは、今回は作品をメインにした特集にしようということでした。
 宮沢賢治は、その人生や思想など、賢治個人に焦点が当たることが多いですが、今回は代表的な作品から、少しマイナーな作品までを取り上げ、作品の抜粋とともに、いろいろな方にエッセイを書いていただけたらと考えました。
 そしてエッセイは、前回とも違いを出し、できるだけ多種多様なバックボーンの方に書いていただきたいと思いました。

 巻頭エッセイは、『銀河鉄道の父』を書かれた小説家の門井慶喜さん。巻頭インタビューはミュージシャンのHIDEさん(GReeeeN)にお願いをしました。
 その他にも、能楽師の安田登さん、ミュージシャンの原田郁子さん(クラムボン)、エッセイストの澤口たまみさん、詩人の暁方ミセイさん、テレビプロデューサーの今野勉さんなど、宮沢賢治を愛する多くの方々にご寄稿いただきました。
 ファン目線であったり、独自の考察であったり、ご自身の専門からの知見であったり……、多様なバックボーンの方々に語っていただくことで、賢治作品の多様性もまた伝えられたのではないかと思います。

 一冊を通して、素敵な写真の数々を提供してくださったのは、写真家の中里和人さん。
 過去にも賢治ゆかりの地を撮影した『岩手県ポラン町字七つ森へ──宮沢賢治への旅』という本を出されていますが、賢治の過ごした土地や、作品の舞台となった場所、そして、賢治が影響を受けたであろう岩手の霊気までを映しだすような写真によって、特集全体のビジュアルイメージを作り上げてくれました。
 ビジュアルでたどる賢治特集にふさわしく、画家の方々による、賢治オマージュの作品も掲載。
 評伝パートは、NHK「100分de名著」で宮沢賢治回のコーディネートを務められた気鋭の研究者・山下聖美 さんにお願いしています。

 今年は賢治没後90年。賢治作品は時を経てもなお色褪せず、さまざまな謎や、新たな解釈を誘い続けています。
 本書が、読者の皆様にとって、宮沢賢治の作品世界に「もう一度出合う」ための、賢治作品を再読、再再読するためのきっかけになってくれれば幸いです。

別冊太陽『宮沢賢治──ほんたうのさいはひは一体何だらう』
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