英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23 シーズン史上最大規模で上映中!

カルチャー|2023.2.17
文=編集部

英国ロイヤル・バレエ団、来日決定で話題集中!

 ロンドンのコヴェント・ガーデンにある英国が誇る歌劇場「ロイヤル・オペラ・ハウス」。世界屈指の劇場のオペラ・バレエ公演を日本にいながらスクリーンで楽しめる本シリーズは回を重ねるごとにファンを増やしてきた。
 特に今シーズンはコロナ禍のため延期になっていた英国ロイヤル・バレエ団の来日公演が初夏に4年ぶりに行われることから、さらなる注目が集まっている。
 2022/23シーズンはオペラ7、バレエ6の計13作品というシーズン史上最大のスケールで人気演目が揃う。2022年12月にオペラ『蝶々夫人』でスタートし、バレエ『うたかたの恋―マイヤリング―』、オペラ『アイーダ』『ラ・ボエーム』と続き、2月はバレエ2演目「ダイヤモンド・セレブレーション」、『くるみ割り人形』、3月は『赤い薔薇ソースの伝説』と続いていく。

『蝶々夫人』©2022 ROH. Photograph by Tristram Kenton
『アイーダ』©Gavin Smart
『うたかたの恋―マイヤリング―』©2018 ROH. Ph by Helen Maybanks20

「ダイヤモンド・セレブレーション」豪華ガラで来日公演の予習も!

 2月17日から上映される「ダイヤモンド・セレブレーション」は同劇場のファン組織の設立60周年を祝う9プログラムから構成された豪華なガラ公演。
 まず注目したいのは、来日公演でも予定されている『FOR FOUR』『プリマ』『ジュエルズ』より「ダイヤモンド」の3作。『FOR FOUR』は『不思議の国のアリス』の振付で有名なクリストファー・ウィールドンが2006年に振り付けた作品でワディム・ムンタギロフ、マシュー・ボール、マルセリーノ・サンベら男性トップダンサー4名が超越技巧を披露。その対をなすプログラムが『プリマ』で、新時代のプリマ・バレリーナ4名がセレブ御用達のファッションデザイナー、ロクサンダ・イリンチックの衣裳に身を包み、あでやかに舞う。フランチェスカ・ヘイワード、ヤスミン・ナグディら実力派プリンシパルの中でも、金子扶生の圧倒的な輝きに目を見張る。

『FOR FOUR』©2022 ROH. Photographed by Andrej Uspenski
『プリマ』金子扶生 ©2022 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

 そして、公演の掉尾を飾る巨匠ジョージ・バランシンの不朽の名作「ダイヤモンド」では、チャイコフスキーの壮麗な音楽とともにマリアネラ・ヌニェスの余裕すら感じる様式美にため息。来日公演で生の舞台が観られるのが楽しみだ。
 そのほかの6作も見どころは多いが、日本でも大人気のプリンシパル、高田茜の『マノン』が観られるのは嬉しい限り。難役とされるファム・ファタルとしての標題役を短い場面ながらも見事に体現している。

『ジュエルズ』より「ダイヤモンド」© ROH Bill Cooper, 2012
『マノン』高田茜、カルヴィン・リチャードソン ©2022 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

『くるみ割り人形』3年ぶりのライト版、フルバージョンを堪能

 2月24日からは、ロンドンのクリスマスホリデーを彩った『くるみ割り人形』が上映される。物語に一貫性を持たせたピーター・ライト版が3年ぶりにフルバージョンで復活し、クララに若手のホープ・前田紗江が大抜擢、金平糖の精には金子扶生が登場。金子はこの役でも素晴らしい輝きを放ち、動きの隅々まで上品で美しい。そのほか、花のワルツのリード役に佐々木万璃子、中国の踊りに中尾太亮など日本出身のダンサーの活躍も目覚ましく、見どころは尽きない。そして、ライト版の真骨頂である物語のラストシーンでは心の底から温かい気持ちが湧きあがり、幸福感に満たされる。

『くるみ割り人形』より  金子扶生(金平糖の精)、ウィリアム・ブレイスウェル(王子)。ハンス・ピーター役はプリンシパル最有力候補のジョセフ・シセンズ ©2018 ROH. Photograph by Alastair Muir

 さらに、映画館上映ならではの楽しみである幕間のインタビューやリハーサル映像も充実。金子や前田など主要な役に焦点を当てるのはもちろん、コール・ド・バレエの雪の精たちについても突っ込んで取り上げる視点はさすが。案内役の元プリンシパル、ダーシー・バッセルが群舞について熱く語る様子にこのカンパニーの強みを見る思いがした。
 3月にはウィールドンの世界初演の話題作『赤い薔薇ソースの伝説』も上映され、ラインナップは後半へと続いていく。古典や伝統を大切に守りながらも常に世界最先端であろうと挑戦するロイヤル・オペラ・ハウスの今を日本で体感できる貴重な機会だ。

『くるみ割り人形』より  ねずみの王様や雪の精たち、クララ役に抜擢された前田紗江 © 2015 ROH. Photograph by Tristram Kenton

[上映情報]

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23

TOHOシネマズ 日本橋ほか全国上映中

【2023年 2月以降の公開日】※1週間限定公開※
ロイヤル・バレエ「ダイヤモンド・セレブレーション」: 2月17日
ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』: 2月24日
ロイヤル・バレエ『赤い薔薇ソースの伝説』: 3月24日
ロイヤル・オペラ『セビリアの理髪師』: 5月19日
ロイヤル・オペラ『トゥーランドット』: 6月2日
ロイヤル・バレエ『シンデレラ』: 6月16日
ロイヤル・オペラ『フィガロの結婚』: 7月7日
ロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』: 8月25日
ロイヤル・オペラ『イル・トロヴァトーレ』: 9月22日

料金:一般3,700円 学生2,500円(税込)

公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/   
■配給:東宝東和

写真:『赤い薔薇ソースの伝説』
©Camilla Greenwell

[来日公演情報]

英国ロイヤル・バレエ団 2023年日本公演
〈ロイヤル・セレブレーション〉
『ロミオとジュリエット』全3幕
2023年6月24日~7月2日
会場:東京文化会館
(他に大阪、姫路公演もあり)

気品あるスタイルと演劇的なバレエの伝統で、世界的な人気を誇るバレエ団が来日。〈ロイヤル・セレブレーション〉では、記事で紹介した『FOR FOUR』『プリマ』『ジュエルズ』より「ダイヤモンド」の3作品に加えて、英国を代表する巨匠フレデリック・アシュトン振付『田園の出来事』の4演目を上演予定。また、2022年に没後30年を迎えたもう一人の巨匠ケネス・マクミラン振付の傑作『ロミオとジュリエット』を主役ペア7組が豪華競演。シェイクスピアの国ならではの演劇性の高さと舞台美術、衣裳の重厚感は必見。

公式サイト:https://www.nbs.or.jp/stages/2023/royalballet/
【問合せ】NBSチケットセンター 電話03-3791-8888

写真:『田園の出来事』ROH/Tristram Kenton

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