©Yoshiyuki Okubo

日本舞踊×琉球舞踊で描く歴史絵巻物語
「 日本舞踊の可能性」 vol.6『琉球英雄傳』

カルチャー|2024.10.28
文=小野寺悦子(編集・ライター)

日本舞踊と琉球舞踊の名手が一つ舞台に! 伝説の「阿麻和利と護佐丸の乱」を新たに読み解く

芸術監督を務める日本舞踊家・藤間蘭黃のもと、2018年に初開催を迎え、映像、ピアノ、バレエなどさまざまなジャンルとコラボレーションを行ってきた「日本舞踊の可能性」。シリーズ第6弾となる今回は、日本舞踊の五耀會と琉球舞踊重踊流宗家親子の共演により、新作『琉球英雄傳』を披露する。上演に先駆け、記者会見が開かれ、作品の経緯と想いが語られた。

 藤間蘭黃の作・演出・振付により創作、世界初演を迎える『琉球英雄傳』。題材となるのは琉球王朝の伝説「阿麻和利と護佐丸の乱」で、蘭黃が沖縄・中城を訪れ、その伝説に触れたのがそもそもの始まりだったと話す。

(左から)西川扇藏、花柳基、志田真木、志田房子、花柳寿楽、藤間蘭黄

 蘭黃「中城からの依頼で、五耀會の面々で何か踊ってほしいというお話をいただいたのがきっかけでした。せっかくならご当地ものにしようと現地へ行って調べていたら、中城という城にまつわる伝説の武将・護佐丸の魅力的な物語と出会って。中城の石垣は15世紀にできたということですが、今も残っているということは、すなわち第二次世界大戦の爆撃も耐えたということ。いかに堅固な石垣だったのか。そんなところから、沖縄、琉球史に非常にロマンと魅力を感じ、五耀會のメンバーで踊っています」

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 沖縄・中城での上演をもとに、時を経て新たに全二幕の物語として創作。キャストには、いずれも重要無形文化財「日本舞踊」総合指定保持者で紫綬褒章受章者である五耀會のメンバー・⻄川扇藏、花柳寿楽、花柳基、藤間蘭黃、山村友五郎に加え、琉球舞踊家の志田房子、志田真木親子と豪華顔ぶれが集結し、日本舞踊と琉球舞踊のコラボレーションにより壮大な歴史絵巻物語を繰り広げていく。

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 物語のキーパーソンで悲劇の王女・百十踏揚に扮するのは志田真木。2022年芸術選奨文部科学大臣賞受賞歴をもつ琉球舞踊の実力者だ。

 蘭黃「国立劇場小劇場で真木さんの踊りをたまたま拝見して、その華やかさ、上品な感じが本当に王女のイメージにぴったりだと思い、出演をお願いしています」

 志田真木「百十踏揚は主の娘ではありますが、彼女は神に仕える神女でもある。琉球舞踊自体がもともと祈りの所作から生まれたと言われているので、こうした役をいただけたのは琉球舞踊家としてとてもありがたく、うれしいことで、何か導かれたような気持ちでもあります。温かい目で見守っていただけたらと思います」

(手前左から)志田真木、志田房子
(手前左から)志田房子、志田真木

 志田房子は琉球舞踊の人間国宝であり大家。蘭黃のたっての願いにより今回特別出演となった。

 蘭黃「房子先生には、当初流球舞踊の監修と振付けをということでお願いしていました。けれど曲が出来上がってきて、台本を見直すうちに、房子先生にも出ていただけたらと考えるようになって。ドキドキしながら改めて出演をお願いをしたら、ご快諾いただくことができました。お二人が舞台に立つだけで琉球の風が感じられるようです」

 志田房子「琉球舞踊は静の世界で想いを秘めながら踊る。けれど日本舞踊の方々は動きが豊富で、心を動かされています。一生懸命務めたいと思います」

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 あらすじ:舞台は十五世紀の沖縄。按司と呼ばれる豪族たちを統括する首里の琉球王・尚泰久(山村友五郎)のもとには、父王と共に琉球統一を果たした中城の按司・護佐丸(西川箕乃助 改め 西川扇藏)や家来の金丸(花柳寿楽)、⼤城賢雄(花柳基)らが仕えていた。
 しかし王朝の権力はいまだ安泰ではない。とりわけ若き按司・阿⿇和利(藤間蘭黃)のもと勢いを増す勝連は、首里の脅威となっていた。
 琉球の平和のために阿⿇和利のもとへ嫁いでいく王の娘で護佐丸の孫・百⼗踏揚(志田真木)。
 その裏で、ひとつの陰謀が動き始めていた――。

公演は2024年11月22・23日、台東区立浅草公会堂にて上演。
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【プロフィール】
日本舞踊家 藤間蘭黃
重要無形文化財「日本舞踊」総合指定保持者。
5歳から祖母、藤間藤子(重要無形文化財保持者)、母蘭景より踊りの手ほどきを受け6歳で初舞台。⻑唄、囃子、能楽、茶道の研鑽も積む。家に伝わる古典の継承とともに、ゲーテ「ファウスト」を一人で演じる『禍神』、「セビリアの理髪師」の舞台を江戶に移した『徒用心』、戦国時代をバレエ・ダンサーと描いた『信⻑』など創作作品も積極的に発表。2017年文化庁文化交流使として世界を巡り、2018年から「日本舞踊の可能性」を主催。芸術選奨文部科学大臣賞、日本芸術院賞、紫綬褒章。五耀會同人。

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