初日拝見！ K-BALLET TOKYO『マーメイド』
熊川哲也のグランド・バレエ、世界初演！

熊川哲也率いるK-BALLET TOKYOの最新作『マーメイド』が、9月8日、上野・東京文化会館で幕を開けた。カンパニー設立25周年を記念し、熊川が新たに手がけたグランド・バレエで、このたび世界初演を果たしている。

　熊川が今回題材に選んだのは、アンデルセンの『人魚姫』。誰もが知る名作童話をもとに、オリジナルストーリーを書き上げ、独自のファンタジー世界を生み出している。

　初演のこの日、マーメイド役の飯島望未をはじめ、プリンス役の山本雅也、プリンセス役の日髙世菜、シャーク役の石橋奨也と、主要キャストにはプリンシパルが集結。さらに王子の友人を堀内將平と栗山廉、プリンセスのおつきには小林美奈と成田紗弥が扮するなど、バレエ団が誇るスターダンサーがずらりと脇を固めた。

　飯島はピュアで無邪気なマーメイドで、プリンスとのパ・ド・ドゥでは可憐に軽やかに熊川の求める高度なパを柔軟に咀嚼する。プリンセスの日髙は煌びやかな趣きで、婚約式でプリンスと踊るグラン・パ・ダクシオンではダイナミックに魅了。ヤドカリやカクレクマノミといった海の生物たちも愛らしく、そのユーモアあふれる動きに思わずクスッとさせられる一幕も。

　楽曲にはアレクサンドル・グラズノフの音楽を用い、古典をもとにオリジナルのマイムを加えてマーメイドの世界を創出。難度の高いパは熊川作品ならではで、スピーディーな展開もあいまって物語に引き込んでいく。

　衣裳やセットもゴージャスで目を奪う。衣裳デザインはボリショイ劇場はじめ世界的に活躍するアンゲリーナ・アトラギッチが、舞台美術は紀伊國屋演劇賞などに輝く二村周作が担当。海中と地上の描写の差異も巧みで、一つステージに二つのシーンを共存させ、物語世界を完成させた。

　年齢問わず幅広く親しみやすい作品で、熊川の新境地といった感もある本作。世界初演を成功裡に収め、新たなレパートリーとして長く踊り継がれていきそうだ。

　『マーメイド』東京公演は9月21日〜、Bunkamuraオーチャードホールで上演。
詳細はこちら→https://www.k-ballet.co.jp/