『Solo Echo / ソロ・エコー』提供:愛知県芸術劇場 ©Tatsuo Nambu 

5年ぶりの再来日! NDTプレミアム・ジャパン・ツアー2024

カルチャー|2024.8.2
文=小野寺悦子(編集・ライター)

NDTの現在地を語るプレミアムな5作品

NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)が、この夏プレミアム・ジャパン・ツアー2024を開催。今回は5年ぶりとなる待望の再来日で、5作のレパートリーをもって、神奈川・愛知・高崎の3都市で上演を繰り広げた。

今回のプログラムは、『La Ruta / ラ・ルータ』、『Jakie / ジャキー』、『One Flat Thing, reproduced / ワンフラットシング,リプロデュースト』、『Solo Echo / ソロ・エコー』、『I love you, ghosts / アイラブユー,ゴースト』の5作品。うち会場ごとに3作品の組み合わせで構成され、この日は『La Ruta / ラ・ルータ』、『Jakie / ジャキー』『I love you, ghosts / アイラブユー,ゴースト』が上演された。

『La Ruta / ラ・ルータ』©RAHI REZVANI

 『La Ruta / ラ・ルータ』は、ピーピング・トムの芸術監督として知られるカブリエラ・カリーソの振付作。2022年にNDT1にて初演され、本公演では髙浦幸乃らオリジナルキャストも出演している。
 着物姿の女に、夜の停留所、心臓を取り出される男と、作品は倒錯的で、ホラーじみた抽象世界が次々展開されていく。それはまるで上質な悪夢のよう。ダンサーの身体に美術、照明と全ての要素が完璧に作用し、カリーソの提示する物語に否応なく引き込まれた。

『La Ruta / ラ・ルータ』©RAHI REZVANI
『La Ruta / ラ・ルータ』©RAHI REZVANI

 『Jakie / ジャキー』はシャロン・エイアール & ガイ・ベハール振付作で、2023年にNDT1にて初演。今世界的に注目を集めるイスラエル出身の振付デュオで、日本では今回初めての本格的な紹介となった。
 薄闇のなか浮かび上がる16名のダンサーたち。彼らは簡素なボディスーツに身を包み、身を寄せ合い蠢き、ひたひたと踊る。輪を描く彼らのステップは儀式のようで、微細な動きを繰り返す。徹底的に身体性をあらわにする作品で、卓越したNDT1のダンサーがそのクオリティを極限まで導いていた。

『Jakie / ジャキー』©RAHI REZVANI
『Jakie / ジャキー』©RAHI REZVANI

 『I love you, ghosts / アイラブユー,ゴースト』はNDTのアソシエイトコレオグラファーを務めるマルコ・ゲッケの振付作。2022年にNDT1にて初演され、今回はオリジナルキャストの刈谷円香らが出演している。
 ゲッケの動きは独特で、身体を小刻みに動かし、それは発作のようにも痙攣のようにもみえる。ダンサーの身体への負荷はいかほどか。緊張と緩和、そしてさらなる緊張と、叩き込むように動きを重ねる。音楽は身体を煽るように響き、幕切れの最後の一瞬までスリリングに駆け抜けた。
 選りすぐりのプログラムで、会場を沸かせた来日ツアー。時を置かぬ再びの来日を願いたいと思う。

『I love you, ghosts / アイラブユー,ゴースト』
提供:Dance Base Yokohama ©瀬戸秀美
『I love you, ghosts / アイラブユー,ゴースト』
提供:Dance Base Yokohama ©瀬戸秀美
ジャパン・ツアーに先駆けオランダ大使館で記者会見を開催。芸術監督のエミリー・モルナーが登壇した。モルナーは前芸術監督のポール・ライトフットの後を継ぎ2020年に芸術監督に就任。今回NDT1を率い初来日している ©Tatsuo Nambu
ウィリアム・フォーサイス振付の名作『One Flat Thing, reproduced / ワンフラットシング,リプロデュースト』©RAHI REZVANI
NDTのアソシエイトコレオグラファーを務めるクリスタル・パイトの振付作『Solo Echo / ソロ・エコー』 提供:Dance Base Yokohama ©瀬戸秀美

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