2023年秋お薦めバレエ映画二選『ダンサー イン Paris』『マシュー・ボーン IN CINEMA/眠れる森の美女』

アート|2023.9.6
文=小野寺悦子(編集・ライター)

この秋、バレエ映画で芸術に触れる

バレエに興味はあるけれど、ステージを観に行くのはちょっぴり敷居が高い?
ならば映画館でその魅力に触れてみるのはいかがだろうか。
バレエ初心者からバレエファンまで楽しめる、
この秋おすすめのバレエ映画2作品を紹介しよう。

パリ・オペラ座バレエ団ダンサー主演! 『ダンサー イン Paris』

若きダンサーのキャリアと恋の行方を爽やかに描く

 エリーズはパリ・オペラ座バレエ団でエトワールを目指すバレリーナ。ところがある日ステージ上で足を痛め、医師から踊れなくなる可能性を告げられる。そんななか今をときめくコンテンポラリー・ダンスのカンパニーと出会い、心惹かれるエリーズ。幼い頃からクラシック・バレエ一筋で生きてきた彼女にとって、それは新たな世界の扉が開いた瞬間だった──。

 主役のエリーズを演じるのは、パリ・オペラ座バレエ団プルミエール・ダンスーズのマリオン・バルボー。監督の「ダンスシーンにスタントは一切使わない」という意向のもと、映画初出演にして主演女優に抜擢された。作中はダンスシーンに加え、ダンサーが抱える葛藤と希望を繊細に表現し、セザール賞の有望若手女優賞にノミネートされている。

 エリーズが出会うダンスカンパニーの主宰者には、ホフェッシュ・シェクター・カンパニーを率いるホフェッシュ・シェクターが本人役で登場。出演に加えダンスシーンの振付を手がけ、作中披露される代表作『ポリティカル・マザー  ザ・コレオグラファーズ・カット』の創作過程も興味深い。

 監督は元パリ・オペラ座バレエ団エトワールで芸術監督のオーレリ・デュポンを追ったドキュメンタリー『オーレリ・デュポン 輝ける一瞬に』(2010年)で知られるセドリック・クラピッシュ。「いつかダンスをテーマにフィクション映画を作る」という20年来の構想を本作で実現させた。オープニングの『ラ・バヤデール』からコンテンポラリーダンスまで、作中はダンスシーンを随所に盛り込み、瑞々しく躍動感溢れる作品に仕上げている。

マリオン・バルボー。1991年生まれ。2008年パリ・オペラ座バレエ団正式団員に。13年コリフェ、16年スジェ、19年プルミエール・ダンスーズに昇格
オープニングの『ラ・バヤデール』などクラシック・バレエシーンも見所

ホフェッシュ・シェクター、マリオン・バルボー
© 2022 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA Photo : EMMANUELLE JACOBSON-ROQUES

[上映情報]
『ダンサー イン Paris』
公開日:9月15日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
監督:セドリック・クラピッシュ
振付・音楽:ホフェッシュ・シェクター
出演:マリオン・バルボー、ホフェッシュ・シェクター、ドゥニ・ポダリデス、ミュリエル・ロバン、ピオ・マルマイ、フランソワ・シヴィル、メディ・バキ、スエリア・ヤクーブ
【原題:EN CORPS/2022/フランス・ベルギー/フランス語・英語/日本語字幕:岩辺いずみ/118分/ビスタ/5.1ch】
配給:アルバトロス・フィルム、セテラ・インターナショナル
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ、UniFrance/French Film Season in Japan 2023
公式HP  https://www.dancerinparis.com

初演10周年を記念し公開! 『マシュー・ボーン IN CINEMA/眠れる森の美女』

オーロラ姫役のアシュリー・ショー、レオ役のアンドリュー・モナハン

 チャイコフスキー三大バレエを題材に、イギリスの人気振付家マシュー・ボーンが演出・振付を手がけた『眠れる森の美女』。2012年の初演から10周年を記念し、今年1月ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場でライブ収録されたステージが、日本のスクリーンで『マシュー・ボーン IN CINEMA/眠れる森の美女』として公開された。

 物語の舞台は1890年。子宝に恵まれない国王夫妻は闇の妖精カラボスの力を借り、念願の娘・オーロラ姫を授かる。しかし夫妻が感謝の気持ちを忘れたことで、カラボスはオーロラ姫に恐ろしい呪いをかける。美しく成長したオーロラ姫は青年レオと愛を育むが、二人の前にカラボスの息子カラドックがあらわれ──。

 ボーンは古典の名作を大胆にアレンジし、妖精とヴァンパイアが織りなす独自の世界を創出。100年の眠りにつくオーロラ姫の物語が、ゴシックテイストとユーモアをちりばめ描かれていく。オーロラ姫役のアシュリー・ショー、レオ役のアンドリュー・モナハンをはじめ、キャストにはボーン作品でお馴染みのダンサーが集結。キャラクターはそれぞれリアルで親しみやすく、ダンサーの演技も表情豊か。演劇的要素もふんだんに、古典作品を知らずとも存分に楽しむことができるはず。

アシュリー・ショー、アンドリュー・モナハン。素足でのパ・ド・ドゥなど、ボーンならではのアイデアが満載
カラボス/カラドック役のベン・ブラウン(中央)
© Illuminations and New Adventures Limited MMXXIII Photo by Johan Persson

[上映情報]
『マシュー・ボーン IN CINEMA/眠れる森の美女』
公開日:公開中
演出・振付:マシュー・ボーン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン
照明:ポール・コンスタンブル
音響:ポール・グルーサス
指揮者:ブレット・モリス
出演:
オーロラ姫/アシュリー・ショー
レオ/アンドリュー・モナハン
ライラック伯爵/パトリック・フィッツパトリック
カラボス・カラドック/ベン・ブラウン
撮影場所:サドラーズ・ウェルズ劇場
撮影時期:2023年1月
上映時間:105分
提供:TRAFALGAR RELEASING 
配給:ミモザフィルムズ 
配給・宣伝協力:dbi inc.
後援:ブリティッシュ・カウンシル
公式HP https://mimosafilms.com/mbcinema/ 

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