「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」 国立西洋美術館

アート|2023.1.6
坂本裕子(アートライター)

「コレクター」のひとつのあり方が魅せる、珠玉のコレクション

 ベルリン国立美術館群ナショナルギャラリーのひとつ、ベルリン国立ベルクグリューン美術館は、パブロ・ピカソの生涯にわたる作品群を中心に、世界でも比類ないコレクションで知られている。その基盤となっているのは、ひとりのコレクターが、自分のために収集したコレクションだ。

 ドイツに生まれ、第二次世界大戦後のパリで画廊を経営しながら個人的にも作品を集めたハインツ・ベルクグリューン(1914-2007)。
 彼が若き日を過ごしたのは、ナチスドイツが台頭していた時代。ユダヤ人として生まれたベルクグリューンもまた、その抑圧を逃れアメリカに渡り、第二次世界大戦後は焦土となったドイツではなく、パリで画商として成功する。

ハインツ・ベルクグリューン
ⒸHeinz Berggruen Collection, Photo: Mary Ellen von Schacky-Schultz.

 もともとは芸術にはあまり縁のない中流家庭に生まれたという彼は、「文芸欄」の批評家、執筆家になりたいと思っていたようだ。
 亡命したサンフランシスコで、メキシコを代表する画家ディエゴ・リベラの助手になったことが、視覚芸術に興味を持つきっかけだったという。以後、サンフランシスコ近代美術館などでの勤務を通じて、ヨーロッパからこの新興国にもたらされたモダン・アートの数々に触れて、自身の審美眼を養った。
 大戦後、ヨーロッパに戻ったベルクグリューンは、パリで画廊を経営する。時代も、戦後の文化復興の機運にも恵まれたのであろう、ピカソやアンリ・マティスをはじめ、多くの作家や文学者たちとも親交を深めながら、世界的な画商として活躍した。
 一方で、自身が敬愛する同時代の芸術家の作品収集にも打ち込み、その晩年まで作品の購入と放出を繰り返して、これが個性あるコレクションに結実する。
 ピカソ、パウル・クレー、マティス、アルベルト・ジャコメッティの4人の芸術家に重点が置かれた、特徴のはっきりしたコレクションは、この4人が共通して師と仰いだ近代絵画の父ポール・セザンヌを加えた粒選りの作品群として世界的な評価を得るものだ。

 1996年からは、彼の故郷ベルリンのシャルロッテンブルク宮殿に面した館で公開され、大反響を得て、2000年には主要作品をドイツ政府が購入する。ベルリン市の援助もあったこの収蔵は、ドイツの美術館史上最も高額な購入のひとつとなっている。2004年、ベルクグリューンの90歳を記念し、美術館はこの類まれなコレクターの名を冠するベルクグリューン美術館に改名。2007年にベルクグリューンが他界したのちも、遺族による継続的な支援を受け、多数の寄託作品とともに、ドイツの国立美術館の一翼を担い、世界中の美術ファンを魅了している。

ベルクグリューン美術館
Courtesy of Museum Berggruen

 ベルクグリューン美術館は現在改修中。これを機に、この個性的であると同時に傑出したコレクションが、国立西洋美術館に来日している。
 ベルクグリューン美術館設立後、館外でコレクションがまとめて紹介されるのは、今回が初めて。世界に先駆けて、精選された97点に、日本の国立美術館の所蔵・寄託作品を併せた108点で、20世紀の美術史を方向づけた巨匠たちの精華を堪能できる。

序章~1章 展示風景から

 展覧会は、「序」として、ピカソの墨による紙作品《眠る男》と、マティスによるベルクグリューン画廊の展覧会ポスター原案が、このコレクターと芸術家たちの関係を象徴する。

アンリ・マティス 《パリ、ベルクグリューン画廊の展覧会(1953年)のためのポスター図案》 1952年 切り紙、画用紙
ベルリン国立ベルクグリューン美術館
© Museum Berggruen – Nationalgalerie, SMB / bpk / Jens Ziehe
ベルクグリューン画廊で開催されたマティスの切り紙絵のみの展覧会のポスターのマケット。
マティス自身は想定していなかったものの、剥落している文字に含まれる「S」のフォルムが、ナチス親衛隊の使用した古代ルーン文字を連想させることが、ユダヤ系のベルクグリューンを困惑させたため、実際のポスターには別の案が採用されたというエピソードを持つ。
展覧会は大成功を収め、作品はすべて売れたそうだ。

 ベルクグリューンが初めて入手したピカソの作品は、パリがナチスドイツにより占領され、ピカソも作品発表を禁じられていた時期に制作されたもの。ピカソと親交のあった詩人ポール・エリュアールから譲り受けたという。彼の素描としては珍しく、静かで穏やかな男女の姿は、ぜひ会場で!

 そこから、全7章で構成される。

 ベルクグリューンが愛し、収集した4人の芸術家に大きな影響を与えたセザンヌ。
 ベルクグリューンは長い収集活動のなかで、いまでは代表作とされる《サント=ヴィクトワール山》をはじめ、さまざまなセザンヌの作品を入手してきたが、最終的に残したのは、夫人を描いた1点と、最晩年の水彩など、さほど大きくもなく、描き込みもされていない、ささやかな、しかしセザンヌらしい作品だった。20世紀絵画を準備した巨匠を彼の眼で選び抜かれた作品でみる「Ⅰ セザンヌ:近代芸術家たちの師」。

「Ⅰ. セザンヌ―近代芸術家たちの師」展示風景から
左:「豊穣で、…渋みがあり、…はっとするほど現代的な」とベルクグリューンが評し、最後まで手元に残したという《セザンヌ夫人の肖像》(手前)は日本初公開。
右:《庭師ヴァリエの肖像》(左)は、ベルクグリューンが最初に入手したセザンヌ作品。

 ベルクグリューン・コレクションの核をなすのが、青の時代から晩年の闘牛士や画家とモデルのシリーズまで、長い生涯で多彩にスタイルを変貌させ、20世紀の表現に大きな変革をもたらした天才・ピカソのコレクションだ。
 その時代と画風の特徴から、「Ⅱ ピカソとブラック:新しい造形言語の創造」「Ⅲ 両大戦間のピカソ:古典主義とその破壊」「Ⅳ 両大戦間のピカソ:女性のイメージ」の3章が充てられる。

 そこには、油彩作品はもとより、水彩やグワッシュ、パステルの作品から版画に彫刻作品まで、制法も多彩に秀作が集められており、その充実ぶりが個人の収集であったことに改めて驚愕する。

 なかでも、絵画という二次元と、現実との間に新しい表現の可能性を拓き、以後の美術に大きな変革をもたらしたキュビスムの時代を紹介するⅡ章は、同館の充実したラインナップにジョルジュ・ブラックの秀作を加え、日本の国立美術館の所蔵作品とともに、本展のみどころとなっている。

Ⅱ章 展示風景から
青の時代からキュビスムへ展開したピカソの作品を、ともに追求したジョルジュ・ブラックの作品と併せて追うことができる。

「Ⅱ. ピカソとブラック―新しい造形言語の創造」 展示風景から

 また、女性遍歴でも知られるピカソは、そのパートナーとの関係が、多く制作の変遷にもみられる。1930年後半から第二次大戦中の彼の女性像を追うⅣ章では、展覧会の貌ともなっている美しくも大胆な《緑色のマニキュアをつけたドラ・マール》や、ベルクグリューン・コレクションを代表する《大きな横たわる裸婦》など、日本初公開の重要作がみられる。こちらも会場で!

 ピカソとともにベルクグリューンが特に熱心に収集したのがクレーの作品だ。
 彼にとって、ピカソが畏敬の対象であったのに対し、クレーは深い共感を覚える愛着のある作家だったという。第一次世界大戦の終わりからバウハウス時代にかけてのクレーの作品を中心に紹介される「Ⅴ クレーの宇宙」は圧巻だ。このコーナーだけで、個展として成り立つのでは、と言えそうなみごとなクレーの作品世界が展開している。

「V. クレーの宇宙」 展示風景から
具象と抽象を自由に行き来するクレーの造形の実験が、楽しげなたくらみとなって並ぶ空間は、豊かな色彩とともにポエムや音楽を感じる。多様で繊細な技法、素材にも注目!

「V. クレーの宇宙」 展示風景から

 あまり大きな作品を遺していないクレーは、しかし、その小さめの静かな作品に、制法や支持体、使用する素材など、実に多様に自由に組み合わせて、独自の世界を表している。
 それらは、具象と抽象との間を揺れ動き、色だけではなく、質感という触覚を刺激し、詩を感じさせ、音を響かせる。

パウル・クレー 《青の風景》 1917年 水彩・鉛筆・ペン・インク、地塗りをした紙、厚紙に貼り付け
ベルリン国立ベルクグリューン美術館、ベルクグリューン家より寄託 
© Private Collection, on loan to Museum Berggruen – Nationalgalerie, Staatliche Museen zu Berlin / bpk /Jens Ziehe
第一次世界大戦の兵役中、任務地近くのアウスブルクの北西地区にあった宿屋「オスト」で描かれたものとされる一作。青い階層のなかに浮かび上がるのは、寄り添うように建っている家々の風景。重なり合う色は、彼がもうひとつ得意とした音楽のように、目にリズムとハーモニーを伝えてくれる。

パウル・クレー 《中国の磁器》1923年 水彩・グアッシュ・ペン・インク、石膏ボード、合板の額
ベルリン国立ベルクグリューン美術館
© Museum Berggruen – Nationalgalerie, SMB / bpk / Jens Ziehe
バウハウスの教授として活動していた頃の一作。東洋美術への彼の関心は、第一次世界大戦前に遡るが、記号としての文字と、イメージとしての絵をどのように画面に構成するか、という関心は、文字はないものの、中国をテーマにしたこの作品にも見出すことができる。クレーの作品は、その支持体や素材もくせ者。ここでは、石膏ボードを支持体にしていることで、「磁器」の質感をより喚起させる。近づいてじっくり見てほしい。日本初公開作品。

 「ピカソが父の人生に最も大きな影響を与えたことは間違いない。しかし、自分の心の奥底にあるものをイメージの中に見出そうとしたときにはいつも、ピカソと並んで最も魅力的で刺激的だったのはクレーだったのである」とベルクグリューンの息子オリヴィエは綴っている。

 みる者に謎かけをして、フッと突き放すような、優しくて意地悪な、いたずらにあふれた宇宙は、ぜひゆっくりひとつひとつの作品に近寄って味わってほしい。

パウル・クレー 《ジンジャー・ブレッドの絵》 1925年 油彩・ペン・インク、凹凸のある壁紙
ベルリン国立ベルクグリューン美術館
© Museum Berggruen – Nationalgalerie, SMB / bpk / Jens Ziehe
クレー自筆の『作品目録』には、技法の説明として「小さな油彩画(イコン風、自作の画枠付き)、厚紙、浮き彫りのように白亜で下地」と記されているそうだ。オリジナルの画枠は失われているが、まさに浮彫のように、凹凸のある立体的な画面だ。タイトルの通り、こんがりとした色からは、ジンジャーの香りがしてきそう。同目録では、タイトルを《植物の祭り》から《ジンジャー・ブレッドの絵》に書き直してもいる。にぎやかに咲き開く花たちは、クリスマスの定番のお菓子へと変奏されていく。楽しんで制作した画家の気持ちが伝わってくる。

パウル・クレー 《子どもの遊び》 1939 年 糊絵具・水彩、厚紙
ベルリン国立ベルクグリューン美術館
©Museum Berggruen – Nationalgalerie, SMB / bpk / Jens Ziehe
支持体の下地に接着剤として使用していた糊を顔料に混ぜた、画家特製の糊絵具で描かれた作品。黒と赤と黄、シンプルな色が、庭で遊ぶ少女の姿を表している。顔の左目になっている四角に「S」の記号は、クレーが耳のモティーフとして使用することが多かったものだそうだ。そうしてみると、顔の横には、浮遊するようなふたつの眼と、鼻の孔と思われる小さな四角、そして口と見えるピンクのハート形が。目を見開いて耳を澄ませる少女は、画面をはみ出して手探りをしている。自分の外の世界を認識する子どもの好奇心と恐れ――そんなことを思った時、画面は多様なメッセージをもたらしてくれるだろう。

 ピカソと並び、20世紀絵画の巨匠と呼ばれるマティス。「安楽椅子のような作品」をめざした彼は、画面に色とかたちのハーモニーを追求した。晩年には油彩画制作からは離れ、彩色した色紙を切り貼りした切り紙絵による作品を遺している。いまでこそ、この切り紙絵は、マティスの晩年のひとつの到達点とされているが、発表当時はその技法のせいか、注目されていなかった。
 この作品の魅力と真価に最初に注目したのが、若き日のベルクグリューンだった。彼は自身の画廊で、マティスの切り紙絵だけの展覧会を最初に開催して、その評価をうながした。この展覧会は好評を博し、作品はすべて売れたのだという。

アンリ・マティス 《雑誌『ヴェルヴ』第 4 巻 13 号の表紙図案》1943年 切り紙、カンヴァスに貼り付け
ベルリン国立ベルクグリューン美術館、ベルクグリューン家より寄託
© Private Collection, on loan to Museum Berggruen – Nationalgalerie, Staatliche Museen zu Berlin / bpk /Jens Ziehe
『ヴェルヴ』は、1937年から1960年の間にテリアードから発行された美術雑誌。マティスは創刊号を含めた6巻ほどの表紙絵を切り紙絵で制作している。こちらは第13号のマケット。実際の雑誌には、緑の地に白だけの2色のヴァージョンが採用された。人物の動きのあるフォルムや花火のような爆ぜる表現は、彼の切り紙絵の代表作『ジャズ』の表現に通じる。こちらも日本初公開。

アンリ・マティス 《ドラゴン》 1943-44年 切り紙
ベルリン国立ベルクグリューン美術館、ベルクグリューン家より寄託
© Private Collection, on loan to Museum Berggruen – Nationalgalerie, Staatliche Museen zu Berlin / bpk /Jens Ziehe
切り紙絵は、助手がグアッシュで彩色した紙を、マティスがはさみで切って、紙などに構成して貼り付けて制作される。それは、意図と偶然、現実と記憶や経験が重なり合って、そこにマティスの発想とタイトルが光る、自由で多様な展開を可能にした。黒い紙のS字が龍の姿を想起させ、彼がよく用いる水草のようなモティーフや人体を表すフォルムの紙、ときには切り抜いた後の残りと思われる紙が配される。みる者は、空を行く龍をみたり、湖水の神を見たり、周囲の形態と併せて物語を紡ぐことができるだろう。色紙の上に描いたような線や、貼り重ねた色紙など、画家の思考、検討の跡も見られる。ぜひ、全体のイメージから得る印象とともに、近づいてその痕跡をたどってみて!

 「Ⅵ マティス:安息と活力」では、彼の油彩、素描、彫刻の多岐にわたる制作とともに、1940年代の稀少な切り紙絵が紹介される。雑誌やリトグラフの下絵としても制作された切り紙絵は、原画が残されているものが少ない。そのなかでも最初期にあたる作品が初来日している。油彩も小品ながら秀作を楽しめる、必見の空間だ。

「Ⅵ. マティス:安息と活力」 展示風景から
切り紙絵の貴重な作品とともに、ニース時代の室内画の秀作や油彩画の最後の時期の特徴的な作品、墨によるデッサン、モノタイプのプリントまで、彼のさまざまな表現もみることができる。

アンリ・マティス《⻘いポートフォリオ》1945年 油彩、カンヴァス
ベルリン国立ベルクグリューン美術館
© Museum Berggruen – Nationalgalerie, SMB / bpk / Jens Ziehe
切り紙絵の制作に本格的に移行する前、油彩制作の最後の時期と言える頃、マティスは一連の室内や室内にいる人物を描いた。この作品もその1点とされる。この時期の頂点の作とされ、彼の代表作でもある《赤い大きな室内》(1948)を思わせる、壁も床も一体となった赤い室内に、おなじみのモティーフが配置される。タイトルのポートフォリオは、ピンクの椅子の上に。その青は、貌の描かれないモデルが座る椅子と呼応する。具体的なものを描きながら、そのフォルムと色彩の調和を普遍的な画面にすることを追求した、マティスらしい一作だ。

 最終章「Ⅶ 空間の中の人物像:第二次大戦後のピカソ、マティス、ジャコメッティ」では、全体主義と第二次世界大戦という、人間性への懐疑と惨禍を経た芸術家たちが、その回復と表現を模索した軌跡を、ピカソ、マティス、そしてジャコメッティの3人の作品に追う。

「Ⅶ. 空間の中の人物像―第二次大戦後のピカソ、マティス、ジャコメッティ」 展示風景から
マティスとジャコメッティの展示を望む。

 晩年のピカソが最も才能を発揮したのは、版画、素描だと考えていたベルクグリューンだが、美術館にはこの時代の主要な絵画作品もあるべき、と考えなおして収集したという《闘牛士と裸婦》や、マティスの晩年の切り紙絵の代表シリーズ「ブルー・ヌード」の一作《縄跳びをする青い裸婦》(ともに日本初公開)と、ジャコメッティの創作の中でも重要な位置を占める《ヴェネツィアの女 Ⅳ》などが並ぶ空間は、圧倒的な存在感や生命力を共鳴させながら、それらを見出し、大切に残したベルクグリューンの眼と感性とともに、現代に考えるべき、求めるべき「人間性」への問いをも残す。

「Ⅶ. 空間の中の人物像―第二次大戦後のピカソ、マティス、ジャコメッティ」 展示風景から
左:マティスの作品
「色彩の魔術師」と言われたマティスだが、その線の魅力も感じられるはずだ。切り紙絵は、その両者を最大限に活かした彼のひとつの到達点とも言えるだろう。奥の作品は、「ブルー・ヌード」シリーズの一作で、日本初公開。単純化された形態に、しっかりと身体の躍動感をとらえた美しい作品は必見!
右:ジャコメッティの作品
ジャコメッティは、絵画も彫刻もひとつとして「完成作」としては認識していなかった作家だ。目にみえるものをとらえることを追求し続けたジャコメッティの、制作への挑戦の過程として、その未完の可能性を作品に感じてみたい。

アルベルト・ジャコメッティ 《ヴェネツィアの女 Ⅳ》 1956 年 ブロンズ
ベルリン国立ベルクグリューン美術館
© Museum Berggruen – Nationalgalerie, SMB / bpk / Jens Ziehe
ジャコメッティの創作のなかで、最も重要な連作のひとつとされるのが「ヴェネツィアの女」である。この年、ヴェネツィア・ビエンナーレのフランス館への出品と、スイスでの個展のために1mを超える女性立像を15点制作したという。その石膏像のうち、9点がブロンズで鋳造された。

 ベルクグリューンのコレクションの特徴は、特定の作家に集中していることだけではなく、必ずしもその作家の代表作とされるものや、ファイン・アートとされる油彩画を主軸にしていないことも挙げられる。あくまでも自身に響くもの、その作家について自分がよいと感じている点が見いだせるもの、そして、それらを作家の仕事として概観できるもの、という一貫した指標に基づいている。

 そこには後の巨匠たちと同時代に生き、彼らと言葉を交わせたこと、現代ほどに彼らの作品が高騰しておらず、比較的自由なやり取りができた時代の僥倖もあったかもしれない。
 しかし、その感性と眼が選んだ作品たちは、20世紀美術において、その創造性を示すエッセンスを凝縮した稀有なコレクションとしてわたしたちを圧倒する。

 近年、少しずつではあるが、日本でも一般の人の美術品収集が活性化している。
 この稀代のコレクターの才を感じるとともに、自身の眼を信じるという、これからの鑑賞、そして美術品の収集へのひとつの力強いメッセージにもなって、巨匠の傑作たちをいつもよりちょっと身近なものとして感じさせてくれるかもしれない。

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展覧会概要

「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」
 国立西洋美術館

日時指定制:展覧会公式サイトより日時指定券を購入の上、来館ください。
新型コロナウイルス感染症の状況により会期、開館時間等が
変更になる場合がありますので、必ず事前に展覧会公式サイトでご確認ください。

会  期:2022年10月8日(土)~2023年1月22日(日)
開館時間:9:30‐17:30 毎週金・土曜日は20:00まで
    (入館は閉館の30分前まで)
休 館 日:月曜、1/10(火)
     1/9(月・祝)は開館
入 館 料:一般2,100円、大学生1,500円、高校生1,100円
    中学生以下、心身に障害のある方と付添者1名は無料(要証明書提示)
問 合 せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

【巡回】
国立国際美術館(大阪) 2023年2月4日(土)~5月21日(日)

展覧会公式サイト https://picasso-and-his-time.jp

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