「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡—市民が創った珠玉のコレクション」 国立新美術館(東京・六本木)

アート|2022.9.16
坂本裕子(アートライター)

市民の意志が息づく傑作揃いの空間に、
20世紀の歴史を感じる

 ドイツ第4の都市ケルンは、世界最大のゴシック建築であるケルン大聖堂や、ヨーロッパ最古の大学のひとつであるケルン大学を擁し、文化都市として知られる古都だ。
 そのケルン大聖堂に隣接して、ヨーロッパ最大級の20世紀から現代美術のコレクションを所蔵するルートヴィヒ美術館がある。

 ルートヴィヒ美術館は、美術コレクターであるペーター&イレーネ・ルートヴィヒが、1976年にケルン市に約350点の作品を寄贈したことを契機に構想され、1986年に開館した。
 ドイツ表現主義やロシア・アヴァンギャルドなどから、ピカソにポップ・アートまでの20世紀美術、現在につながるコンテンポラリー・アート、さらには写真芸術史を語れる豊かな写真コレクションが収蔵される。いずれもそれぞれの作家を代表できる優品揃いだ。

 しかし、もっとも大きな特徴は、これら収蔵品が市民により収集され、寄贈・支援されてきたことにある。
 ルートヴィヒ夫妻は、数多くのピカソ作品をはじめ、ロシア・アヴァンギャルドの優品とポップ・アートの包括的なコレクションをもたらし、1960年代以降の同時代の美術を収集する指針を美術館に示した。
 画家エルンスト・ヴィルヘルム・ナイの支援者として知られるギュンター&カローラ・パイルは、やはり1976年に多くのナイの作品とともに、マックス・エルンストを含む近代美術の作品群を寄贈する。
 1977年には、写真芸術の支援者でコレクターだったレオ・フリッツ&レナーテ・グルーバーのコレクションが収蔵され、同館の写真・映像コレクションの礎となった。

 そして、なにより自国ドイツを中心とした近代美術の多くを第二次世界大戦直後の1946年にケルン市に寄贈したヨーゼフ・ハウプリヒの存在が大きい。
 市内で弁護士として活動していた彼は、1923年から表現主義や新即物主義などのドイツ近代美術の収集を始めたという。
 1933年ヒトラー率いるナチ党が政権につくと、こうした作品は「退廃芸術」として公立美術館からは撤去、没収された。それらを集めて展示した1937年の「退廃芸術展」はよく知られているだろう。
 ハウプリヒは、没収された作品をナチの御用画商から購入するなど、大戦中も細々と収集を続け、破壊や流出から作品を救い出していた。それらが終戦後、市に寄贈されたのだ。このコレクションの受け皿となるべきヴァルラフ=リヒャルツ美術館の建物は戦争で破壊されていたため、寄贈作品はまず旧ケルン大学の建物で公開される。さらに、1957年に同館が新設されるまでドイツ国内のみならずヨーロッパ各地を巡回し、戦争の傷癒えぬ人々に大きな希望と力を与えた。そのなかのひとりが、当時21歳の学生だったペーター・ルートヴィヒであり、その後の彼の美術支援活動につながったといわれている。
 美術品の寄贈にとどまらず、ハウプリヒは基金も設立し、続いて1957年のゲオルグ&リリー・フォン・シュニッツラーのマックス・ベックマンの作品群が、1958年のヴィルヘルム・シュトレッカーのパブロ・ピカソ、アンリ・マティス、オスカー・ココシュカ、パウル・クレーといったコレクションが収蔵されて、ドイツ近代美術コレクションが充実していく。彼に続く寄贈者たちも継続的に美術館を支援した。
 ハウプリヒに由来するヴァルラフ=リヒャルツ美術館の近代美術のコレクションは、ルートヴィヒ美術館の設立を機に移管され、その基盤のひとつとなる。

 1985年には、会員制の支援者の組織、ルートヴィヒ美術館ケルン現代美術協会も設立され、現代美術の振興と収集に積極的に努めている。こうして、美術史上でも重要な一角をなすドイツ近代絵画の豊かなコレクションが遺され、同時代のロシア・アヴァンギャルドに、世界で3本の指に入るピカソ・コレクション、ヨーロッパ最大級のポップ・アートのコレクションに、写真史を網羅するラインナップ、さらには世界各地の現代美術まで、質・量ともに世界的にも評価される美術館となったのだ。
 ヨーロッパの美術館の多くが、王家や貴族のコレクションをもとに成り立っているなかで、ルートヴィヒ美術館は、市民により造られ、育てられたコレクションなのである。

 このルートヴィヒ美術館のコレクションから、およそ150点の優品が国立新美術館に来日している。
 「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション」の空間は、タイトル通り珠玉の作品たちが、主要なコレクターや支援者たちの想いと時代の空気とともに、市民のパワーを伝える。

 編年の7章で綴られるのは、20世紀の美術史と現代への接続。
 各章でそれぞれの時代、テーマの写真群が揃っているのもポイントだ。

 「第1章 ドイツ・モダニズム――新たな芸術表現を求めて」では、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ドイツで興った動向を観ていく。まさにナチ・ドイツにより「退廃芸術」として迫害された作家たちだ。

 この時代、ドイツの若い芸術家は新しい表現を求めてそれぞれにグループを結成し、彼らを支える画廊たちとともに活発に活動した。
 なかでも、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーやエーリヒ・ヘッケルらが1905年にドレスデンで結成した「ブリュッケ(橋)」と、ワシリー・カンディンスキーやフランツ・マルクらが1912年にミュンヘンで結成した「デア・ブラウエ・ライター(青騎士)」は、いずれも写実主義や印象派を超えた表現を模索する。前者は人間の持つ根源的な生命力を激しい色彩と筆致で表現し、後者は、比較的ゆるやかなつながりの中で、各々がフォルム(形態)を超えた普遍的な芸術を求めて制作した。形態と目にみえるものから解放された感覚は、カンディンスキーのような抽象絵画への端緒ともなり、20世紀芸術への大きな契機となる。
 鮮やかでプリミティブな「ブリュッケ」の作品と思索的で自由な展開をみせる「青騎士」の作品。比較しながら観られる貴重な空間だ。

ルートヴィヒ美術館展 東京会場
Chapter1 展示風景から
「ブリュッケ」と「青騎士」、ドイツ表現主義の作家たちの作品が並ぶ。

ワシリー・カンディンスキー《白いストローク》 1920年
Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 10003. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_d056273_01)
抽象画の創始者のひとりとされるカンディンスキーが、第一次世界大戦を逃れてドイツからロシアに戻っていた時に描いた一作。色と形が感覚を呼び起こす純粋な表現を求めていた彼がたどりついたのは、具象的な対象を排除する抽象表現だった。この頃は、まだ聖書の黙示録的イメージの名残りをとどめつつ、中央の白いストロークが鮮烈な印象をもたらす。1933年にナチによりバウハウスを追われ、パリ郊外に移ったのちも画家の手元に遺されていた作品。1977年に同館に購入された。

 また、初の近代戦争として兵器による大量殺戮、無名の死をもたらした第一次世界大戦の衝撃から、存在としての人間やモノをあらゆる虚飾を排して描こうとした「新即物主義(ノイエ・ザハリヒカイト)」の画家たちも登場する。
 中心的な作家であるオットー・ディクスやジョージ・グロスの作品には、写実を超えたところに露わになる人間の本質が描き出される。グロスが美術史家を描いた肖像画は、退廃芸術としてドレスデンの美術館から接収されたものを、戦後ハウプリヒが設立した基金によって買い戻した作品だ。

 ハウプリヒの収集のはじまりは、ヴィルヘルム・レームブルックの彫刻作品だったという。
 レームブルックのほか、エルンスト・バルラハやケーテ・コルヴィッツの彫刻作品も見どころだ。いずれも「退廃芸術」として多くが破壊された作家たちだ。作品の力強さとともに、歴史の暴挙にも想いを馳せたい。

Chapter1 展示風景から

エルンスト・バルラハ《うずくまる老女》 1933年 
Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 76/SK 0047. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_c005052)
ドイツが生んだ20世紀表現主義の彫刻家バルラハは、画家、劇作家としても活躍した芸術家である。南ロシアを旅し、そこで厳しい自然とともに生きる人びとの力強さに感銘を受け、簡潔な輪郭線と重量感のある木彫で、素朴な人びとの姿を表した。それはときに宗教性をもたたえ、聖堂のための制作なども手がけたが、ナチにより退廃芸術の烙印を押され、多くの作品が破壊され、制作も制限された。本作は、破壊を免れて、1948年に購入された。
会場では、彼を悼んでケーテ・コルヴィッツが制作した《哀悼》と並んでいる。

右:Chapter2 展示風景から
写真コレクションも充実している。

 「第2章 ロシア・アヴァンギャルド ――芸術における革命的革新」は、ドイツ表現主義と同時代にロシアで興った芸術動向を追う。

 1917年、社会主義革命により帝政が倒れたロシアでは、社会主義政権の指導のもと、ロシア・アヴァンギャルドと呼ばれた芸術革新運動が隆盛する。芸術を理論化し、実践していくことから社会変革に貢献することをめざした活動は、スターリン主義が台頭すると反社会的として排除されていくのだが、当時は次世代を担う新たな指標として活躍した。

 建築、インテリアから写真まで、さまざまな表現を独自の構成主義理論で組み立て、統合芸術を志向したアレクサンドル・ロトチェンコ、絵画の絶対性を追求し、「スプレマティズム」を提唱して究極の無対象絵画を生み出したカジミール・マレーヴィチ、人間の視覚や色彩感覚に直接影響を与える光線に注目して、線と色、それが生み出すリズムを統合する「レイヨニスム」を唱えたミハイル・ラリオーノフ、ロシアの民衆たちの土着の文化に寄り添ったナターリヤ・ゴンチャローワなどに、理想と希望に燃えていた芸術家たちの軌跡を感じる。
 彼らは民衆にその理念を伝える効果的なメディアとして写真を活用した。ロトチェンコの大胆でいて緻密な構図の作品や、民衆の姿を象徴的に捉えたゲオルギ・ゼルマの作品は、写真史には欠かせない一群だ。

Chapter2 展示風景から
左:イワン・クリューン 《3色のスプレマティズムによるコンポジション》 1917年頃
右:グスタフ・クルツィス 《ダイナミックな街》 1919年

カジミール・マレーヴィチ《スプレムス 38番》 1916年
Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01294. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_d033965_01)
スプレマティズム(至高主義)を唱え、徹底した無対象絵画でのちの抽象表現主義に大きな影響を与えた、ロシア・アヴァンギャルドを代表する画家マレーヴィチの一作。究極の「白の上の白」に到達したのち、色で展開されたスプレマティズム絵画の一作は、ルートヴィヒ夫妻により購入され、同館に収まることとなった。

Chapter2 展示風景から

アレクサンドル・ロトチェンコ《ライカを持つ少女》 1934年(プリント:1934年以降)
Museum Ludwig, Köln / Cologne, Sammlung Fotographie ML/F 1978/1072. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_c009362)
ロシア構成主義の活動のなかで中心的な存在であったロトチェンコは、絵画・彫刻・建築から写真・デザイン・広告まで、幅広く活躍した。なかでも写真は、対角線や俯瞰の構図、光と影の効果、クローズアップや遠近法の大胆な使い方など、独特の作品を遺し、それらは現代でも強いインパクトを放つ。
本作は、ルートヴィヒ・コレクションより寄贈されたもの。会場では、ムラースコヴァー・コレクションから購入された作品とともに、彼の独自性を感じられるラインナップが揃う。

 「第3章 ピカソとその周辺 ――色と形の解放」は、20世紀絵画における二大革命である「キュビスム」と「フォービスム」、そして写真技術に新しい手法をもたらしたマン・レイの写真で、フランスの動向が紹介される。

 ペーター・ルートヴィヒは1950年にピカソ論で博士号を取得したが、実作品を観たのは、1955年、ケルンで開催された大回顧展の折だったそうだ。以後、夫妻はピカソ作品を積極的に収集し、それは彼の全時代全作品におよび、ルートヴィヒ美術館のピカソ・コレクションは世界で3番目の規模を誇る。
 本展ではピカソの各時代を代表する作品とともに、同時代にパリで活躍した作家たちの作品が並ぶ。
 ハウプリヒ旧蔵のマルク・シャガールやモーリス・ド・ヴラマンクの作品は、20世紀の早い時期にドイツで公開・収蔵された点でも重要とされているもの。
 マン・レイは、同館に写真コレクションをもたらしたグルーバー夫妻の盟友だったという。レイヨグラフやソラリゼーションの代表作が楽しめる。

Chapter3 展示風景から
アメデオ・モディリアーニ 《アルジェリアの女》 1917年

 「第4章 シュルレアリスムから抽象へ ――大戦後のヨーロッパとアメリカ」は、戦後の美術動向を名作で追う空間。
 第二次世界大戦後、疲弊したヨーロッパに代わり、新たなアート・シーンとして台頭したのがアメリカである。
 ヨーロッパでは、大戦による破壊から具象的なものへの懐疑、人間性の回復を求めて「アンフォルメル(非定型)」の絵画が誕生した。一方、アメリカでは抽象表現主義が開花する。そこには、ヨーロッパの戦禍を逃れてアメリカに亡命したマックス・エルンストやサルバドール・ダリなど、20世紀最大の芸術運動であるシュルレアリスムの作家たちの影響が大きい。
 人間の無意識や偶然性を重視するシュルレアリスムは、ウィレム・デ・クーニングやジャクソン・ポロックらにより受容され、具象と抽象の間をたゆたいながら、やがて自由な画面へと展開され、世界へ広がっていくのだ。
 ヨーロッパからアメリカへ、そしてふたたびヨーロッパへ。大戦後のふたつの抽象表現の動向の呼応が感じられる空間。

ヴォルス《タペストリー》 1949年
Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01167. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, Peter Kunz, rba_d032855_01)
1937年に写真家として個展デビューを果たしたヴォルスだが、第二次世界大戦下収容所に収監された際に、恋人から差し入れられた道具で水彩に没頭する。繊細な線と淡い彩色による水彩画は戦後評価を得て、本格的に油彩に取り組んだ。美術批評家ミシェル・タピエに見いだされ、アンフォルメルの画家として知られるようになるも、食あたりが原因で1951年に命を落とした。荒々しい絵具の筆致、それを引っ掻いたような神経質な線など、抽象的な画面には画家の精神や心情が感じられ、惹きつけられる。こちらもルートヴィヒ・コレクションよりの寄贈。

ジャクソン・ポロック《黒と白 No. 15》 1951年(Chapter4 展示から)
カンヴァスを床に置いて、刷毛や棒で絵具を垂らして描く「ドリッピング」の手法で、アメリカ抽象表現主義を代表する画家のひとりポロックの一作は、多彩な絵具を用いていたそれまでとは異なり、黒一色で描かれる。この後、ふたたび具象的なイメージが画面に表れてくる過渡期的な作風を示し、彼が新しい表現を模索していたことを感じさせる。1972年に購入されたもの。

 「第5章 ポップ・アートと日常のリアリティ」では、代表的なポップ・アート作品を堪能できる。

 アメリカの消費社会を羨望とともに皮肉ってイギリスではじまったポップ・アートは、対象国アメリカで大きく花開く。
 ジャスパー・ジョーンズの数字や、ロイ・リキテンスタインのコミックのひとコマ、そしてアンディ・ウォーホルのエルヴィス・プレスリーなど、人々が日常の生活の中で見慣れたイメージを使用した作品は、アイロニカルに大衆文化を批評すると同時に、「絵画とは、美術とは何か」を観る者に問いかける。
 イギリスのポップ・アートの代表的作家であるリチャード・ハミルトンによるミック・ジャガーが逮捕された際の報道写真を素材にした代表作もお見逃がしなく。

 「第6章 前衛芸術の諸相 ――1960年代を中心に」では、ルートヴィヒ夫妻により収集された作品を中心に、1960年代に多様化していく前衛芸術を感じる。

 網膜上の知覚作用を応用したオプ・アートや最小限の表現を志向したミニマリズム、色彩の作用を追求したカラー・フィールド・ペインティングなどの絵画作品から、金属や異素材を使い、空間を含めて作品とするインスタレーション的な作品など、60年代を代表する作品群もメジャーどころが揃っている。おすすめはヨーゼフ・ボイスの愛弟子で、近年再評価の高まるブリンキー・パレルモの作品。早世の作家のため世界的にも作品が少ないこの作家まで押さえているのはおみごと。

モーリス・ルイス《夜明けの柱》 1961年
Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01091. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_d040139)
アメリカ抽象表現主義のなかで生まれたカラー・フィールド・ペインティングを代表する作家のひとり、モーリス・ルイスは、絵具(アクリル)をカンヴァスに染み込ませる「ステイニング」の技法で、静謐ながら奥行きを感じさせる色面の作品を生み出した。技法はわかっているのだが、彼の具体的な制作方法はいまだに不明なのだとか。「ヴェール」「アンファールド」「ストライプ」の3つのスタイルに分類される彼の創作のうち、こちらは「ストライプ」に当たる作品。カンヴァスには浸みているのに隣り合う色は混ざることなく、描かれているのに流れてできたようで、不思議な“あわい”が「絵画とは何か」という問いを投げかける。ルートヴィヒ・コレクションより寄贈の一作。

 「第7章 拡張する美術 ――1970年代から今日まで」は、ルートヴィヒ夫妻らの志を継いで、同館が現代美術を支援し活動してきたなかで収集された作品を含め、映像やパフォーマンスなど、ますます多様に展開する表現とともに、社会問題や環境問題と密接にからんでいく現代の美術の様相が提示される。

 「社会彫刻」を提唱して、立体作品やパフォーマンスなど多岐に活動したヨーゼフ・ボイス、東西に分断していたドイツの問題を提示するゲオルク・バゼリッツなどから、ルートヴィヒ美術館ケルン現代美術協会の「ユンガー・アンカウフ」と呼ばれる新進気鋭の作家作品を購入する事業を通じて所蔵された2000年代以降の若手アーティストの作品まで。
 その空間は、いま現在にとどまらず、未来への力強い芸術支援と保存・公開への意志に満ちている。

カーチャ・ノヴィツコヴァ《近似(ハシビロコウ)》 2014年(Chapter7 展示から)
インターネットが普及した2000年代以降の、ポスト・インターネット・アートの先駆者のひとりとされるノヴィツコヴァによる本作は、ネットから採取した動物のイメージをアルミニウムにデジタル・プリントしたシリーズ作品。こちらは撮影可能。実在の動物がイメージとしてネットに氾濫し、それが巨大な立体物として提示され、ふたたび撮影されてネットに流れて共有されていく。“似て非なるもの”は、イメージとしては永遠にバーチャルの世界に生息していく。地球環境と人間と動物との関わりやネット社会の在り方を問いかける一作。

 文化無きところに国は存在しない。
 大きな負の歴史を背負うからこそ、市民の想いは強く、すばらしいコレクションと美術館を体現させ、そして未来へとつないでいくのだろう。
 珠玉のコレクションへの興奮とともに、いま一度、日本も戦後と文化支援の在り方の立ち返りが求められるのではないか、そんな思いも抱きつつ会場を出る。

展覧会概要

「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡—市民が創った珠玉のコレクション」
 国立新美術館 企画展示室2E

展覧会HPより日時指定券を購入の上、来館ください。
新型コロナウイルス感染症の状況により会期、開館時間等が
変更になる場合がありますので、必ず事前に展覧会HPで確認ください。

会  期:9月26日(月)まで
開館時間:10:00‐18:00 毎週金・土曜日は20:00まで
(入場は閉館の30分前まで)
休 館 日:毎週火曜
観 覧 料(税込):一般2,000円、大学生1,200円、高校生800円
        中学生以下は無料
        障がい者手帳持参者と介護者1名は無料
問 合 せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

【巡回】
京都国立近代美術館 2022年10月14日(金)~2023年1月22日(日)
会  期:2022年10月14日(金)~2023年1月22日(日)
開館時間:10:00-18:00 毎週金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
休 館 日:月曜日(ただし12月26日と2023年1月9日は開館)、12月29日~1月3日
観 覧 料(税込):一般2,000円、大学生1,100円、高校生600円
        中学生以下、母子家庭・父子家庭の世帯員の方、
        心身に障害のある方と付添者1名は無料(要証明)

展覧会HP https://ludwig.exhn.jp/

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