別冊太陽9月の新刊は『絵本作家のしごと』です。
毎年2000冊以上の絵本が刊行されるなかで、作家たちは何を想い、どう作品作りと向き合っているのか。次世代を牽引する8名の絵本作家に取材した一冊です。
各作家へのインタビューを通して感じたことは、どの作家も平坦な道を歩いてきたわけではないということでした。絵本という表現に出合うまでの道のり、自分らしい作風を見つけるまで道のり……、その長い道のりの歩き方が、作家の個性を形作っています。
詳しくは、ぜひ本誌を読んでいただきたいと思いますが、イントロダクションとして、各作家の印象的な言葉を誌面とともに紹介します。
心に響く何かを感じられた方は、ぜひ本誌もお手に取ってくださいませ!
ミロコマチコ
「絵本コースのオオノヨシヒロ先生が本当に自由で、『いいよいいよ〜、おもろいやんか』といつも言ってくれて。先生も作家で、超ヘンテコ絵本を作ってたから、信頼できました。『自分の好きなように描いていい』というのが、アートスクールで得られたと思います。ほんとに、絵の中でだけのびのびできるんですよね」
鈴木のりたけ
「絵本が、現実離れしてファンタジー的なものが多かったり、友情や愛情、努力は報われるといった古典的とも言えるテーマを繰り返してたりしていた部分に、読者が何か変化を求めていたところもあったかもしれないですよね。日々生活している、直面していることを描く。生きてることって、もっと泥臭くて、酸いも甘いも清濁あわせ呑むみたいなことできっと成り立ってるはずだから」
及川賢治
「自分がわかっていることを描きたいんじゃなくて、わかんないことを描きたい。『わかんないね』を共有する。謎が一個解けるような絵本じゃなくて、世界が一個わかんなくなるような本が作りたいなと思います」
きくちちき
「モンヴェルの絵本を、骨董市で見つけて。本当に、ビリビリビリ、ときて、電気が走るってこういうことなんだ、みたいな。百年前にこんなすごいものが生まれて、百年後の僕がこんなに感動できて……元々デザインや印刷の仕事をしてたので、ものとして、本としての魅力もあったんですけど、いろんな感情がわーっと込み上げてきて。自分でも何か作らなきゃだめだ、となって、一気にダーッと絵を描いて、物語みたいなのを紙切れに書いて、ファイリングして。絵本のように描きたい、と思ってました」
ヨシタケシンスケ
「今の子たちが、覇気がない、夢がないと言われるその気持ちがよくわかるというか。生まれた時から身の回りに何でもある状態でハングリーになれと言われても、わかんないじゃないですか。当時の僕みたいに、未来を怖がってる子たちに『わかるよ、怖いよね』と言う係だな俺は、と(笑)。僕みたいな子の気持ちしかわからないから、そういう子に向けて描きたいなあと思うし、逆に言うと、当時の自分しか見てないんですよね」
出久根 育
「ゴフスタインさんの作品や語っていることを最近よく読むのですが、彼女のミニマリズムにとても惹かれます。木にリスがいる、というだけのことで伝わってくるものがある。それは作者自身がとても強く思いを持っているから、シンプルな絵と短い言葉にそれが込められるんですよね。そしてそれがみんなに伝わっていく。私自身も絵本の中で伝えたいと思うのは、生きているものとしてのプリミティブ、根源的な世界なんじゃないかなと今は思っています」
堀川理万子
「やっぱり私は描いたり、人形を作ったり、考えたことを形にするのが好きだったんだなと思います。文化祭のポスターを描いたら、それを見て来たというほかの学校の人がいたり、うちの父らしき真っ赤な顔した酔っぱらい姿を描いたらみんなにすごくウケたり。私が一番実力を発揮するのはいたずら描きなんだな、と思いはじめてました」
こみねゆら
「私はきっと、長〜い夏休みなんだと思う。就職をちゃんとしたことがないし、何かを作りたいという思いだけで生きているところがあるから。夏休みの研究みたいなものが一生を通してあるような。別に誰もそれを待ってなくても、自由研究はしてみようという感じなんです、きっと」