“今”に訴えかけた開場25周年記念公演、第1弾 『ボリス・ゴドゥノフ』
1997年、東京・初台の地に誕生した新国立劇場。現在、開場25周年記念公演が行なわれているが、オペラ部門でその嚆矢となったのが、昨年11月、ポーランド国立歌劇場との共同制作により、同劇場芸術監督のマリウシュ・トレリンスキの演出で新制作上演された『ボリス・ゴドゥノフ』(指揮:大野和士新国立劇場オペラ芸術監督)。映像使いも印象的に、 “今”に訴えかけるプロダクションとなった(公演映像は3月24日深夜より6か月間、無料配信されている)。
現代社会の問題に鋭く切り込む作品群
昨年の新国立劇場オペラパレスでは、一人の女性が見た夢として物語を展開させ、家庭内の虐待問題をも扱った『ペレアスとメリザンド』(指揮:大野和士、演出:ケイティ・ミッチェル)や、歴史を扱う作品を今日いかに上演すべきかおしゃれに鋭く問いかける『ジュリオ・チェーザレ』(指揮:リナルド・アレッサンドリーニ、演出・衣裳:ロラン・ペリー)といった秀逸な舞台が新制作で上演され、オペラ作品を通じて現代社会の問題を考える醍醐味を与えてくれた。
『ジュリオ・チェーザレ』撮影:寺司正彦
愛され続けるレパートリー作品の充実
また、レパートリーの中から『ばらの騎士』(指揮:サッシャ・ゲッツェル)、今年に入って『ファルスタッフ』(指揮:コッラード・ロヴァーリス)と、人間をじっくり描き出す故ジョナサン・ミラー演出の2作品も上演され、再演を重ねるプロダクションが愛され続ける理由を教えてくれた。
待望の記念公演第2弾は、豪華絢爛なゼッフィレッリ版『アイーダ』
25周年記念公演として『ボリス・ゴドゥノフ』に続くのが、4月に上演される『アイーダ』(指揮:カルロ・リッツィ)と6月~7月に上演される『ラ・ボエーム』(指揮:大野和士)。劇場の開場記念に上演された『アイーダ』は、名作映画『ロミオとジュリエット』の監督としても名高い故フランコ・ゼッフィレッリの演出・美術・衣裳によるもので、劇場のレパートリーの中でも大人気のプロダクション。古代エジプトの世界を荘厳に再現した舞台美術や、歌手・合唱・バレエ・助演俳優と総勢300人もの出演者が登場する第2幕の“凱旋の場”など、豪華絢爛なスペクタクルが展開される。劇場の最寄り駅である京王電鉄初台駅の2番線の電車の接近メロディはこの第2幕で流れる「凱旋行進曲」となっているが、サッカーの応援歌としてもおなじみのこの曲、作品をご存じない方でも一度は耳にしたことがあるはず。
記念公演第3弾は19世紀パリの青春群像『ラ・ボエーム』
パリの街が印象的に描かれる粟國淳演出の『ラ・ボエーム』も、2003年の初演以来上演を重ねているプロダクション。映画化もされたブロードウェイ・ミュージカル『RENT』のベースとなったオペラでもあり、ミュージカル・ファンも一度は聴いておきたい作品である。
新国立劇場オペラ 今後の公演
[新国立劇場 オペラパレス]
●開場25周年記念公演 『アイーダ』 ジュゼッペ・ヴェルディ
2023年4月5日~4月21日
●開場25周年記念公演 『ラ・ボエーム』 ジャコモ・プッチーニ
2023年6月28日~7月8日
●『リゴレット』新制作 ジュゼッペ・ヴェルディ
2023年5月18日~6月3日
ヴェルディ中期の人気作『リゴレット』を新制作。遊び人マントヴァ公爵と公爵に媚びを売る道化師リゴレット、その娘で純粋なジルダの愛と悲劇の物語が、有名曲「女心の歌」「慕わしき人の名は」など数々の名アリアと重唱で綴られる。エミリオ・サージ演出のプロダクションは現代的な視点で登場人物の孤独をクローズアップ。
リゴレット役に名バリトンのフロンターリ、ヒロインのジルダに新世代のコロラトゥーラのスター、トロシャン、マントヴァ公爵にはヨーロッパの歌劇場を席捲するライジングスター、リヴァスが登場!
[新国立劇場オペラ公演 『ボリス・ゴドゥノフ』無料映像配信中!]
『ボリス・ゴドゥノフ』(2022年11月17日上演)
2023年3月25日3時(24日深夜)~ 9月24日19時
*グルック『オルフェオとエウリディーチェ』も4月7日19時まで配信中!
2022年5月、日本を代表する世界的振付家、勅使川原三郎の演出・振付により、音楽と舞踊が見事に融合したバロック・オペラを世界初演した、話題作を配信。
■配信メディア
・Opera Vision 公式サイト
https://operavision.eu/performance/boris-godunov-0
・新国立劇場ウェブサイト内 新国デジタルシアター
https://www.nntt.jac.go.jp/stream/
新国立劇場HP https://www.nntt.jac.go.jp/
新国立劇場ボックスオフィス ☎03-5352-9999