[現地ルポ]パリ・オペラ座 『白鳥の湖』&ピナ・バウシュ『コンタクトホーフ』

カルチャー|2023.1.30
文・加納雪乃(パリ在住ライター)

2022年パリのクリスマス・シーズンを 2つの劇場で華やかに彩った、オペラ座バレエ

 パリ・オペラ座バレエは毎年末、ガルニエ宮(パレ・ガルニエ)とオペラ・バスティーユ両劇場で公演が行われる。2022年は、ガルニエ宮では12月2日〜31日に、ピナ・バウシュ振付『コンタクトホーフ』が21回、オペラ・バスティーユでは12月10日〜1月1日に、ルドルフ・ヌレエフ振付『白鳥の湖』が16回上演された。

ルドルフ・ヌレエフ振付『白鳥の湖』 ©Svetlana Loboff/Opéra national de Paris
ピナ・バウシュ振付『コンタクトホーフ』 ©Julien Benhamou/Opéra national de Paris
トップ画面:『白鳥の湖』 ©Yonathan Kellerman/Opéra national de Paris
『コンタクトホーフ』リハーサル写真より、ジェルマン・ルーヴェ ©Julien Benhamou/Opéra national de Paris

 2〜3年おきにプログラムされる『白鳥の湖』だが、常にチケットはソールドアウトの超人気演目。今シリーズ中に、1984年12月の初演以来の上演回数が300回を超えた。
 多くのエトワールが主役カップルに配役されていたが、ケガなどが相次ぎ、初日を前に、女性はリュドミラ・パリエロが、男性はユーゴ・マルシャン、マチアス・エイマン、マチュー・ガニオが次々と降板。男性エトワールはポール・マルクだけという状況になってしまった。

『白鳥の湖』 パリ・オペラ座での自身最後のオデットを演じた、ミリアム・ウルド=ブラームのうっとりするような抒情性
©Yonathan Kellerman/Opéra national de Paris

ジークフリート王子役で4人がデビュー! フレッシュな配役で『白鳥の湖』を楽しむ

 初日を飾ったのは、ヴァランティーヌ・コラサンテとポール・マルク、そしてこちらも降板かつ退団も発表されたフランソワ・アリュに代わりウォルフガング&ロットバルトに配役された、ジェレミー=ルー・ケール。

『白鳥の湖』 ヴァランティーヌ・コラサンテ、ポール・マルク。ロットバルトはジェレミー=ルー・ケール。コール・ド・バレエの美しさも魅力
©Yonathan Kellerman/Opéra national de Paris

 第2配役は、技術も演技も卓越したドロテ・ジルベールが円熟のオデット&オディールで圧倒的存在感をしめし、この2年来、代役でヌレエフ大役をいくつも踊った若手ホープのギヨーム・ディオップが、初々しくこのカンパニーらしいエレガンスも備えたジークフリート王子を好演した。

『白鳥の湖』 ドロテ・ジルベール、ギヨーム・ディオップ。ウォルフガングはパブロ・レガサ
©Yonathan Kellerman/Opéra national de Paris

 続いて、ミリアム・ウルド=ブラームが自身最後のオデット&オディールをマルク・モローと熱演。彼女の最高のパートナーであるマチアスが降板したのが悔やまれる。

『白鳥の湖』 ミリアム・ウルド=ブラーム、マルク・モロー
©Yonathan Kellerman/Opéra national de Paris

 そして、一夜限りの特別配役として、エロイーズ・ブルドンとパブロ・レガサ。エロイーズは、2015年スジュ時代に大抜擢でこの役を経験済み。当時同様、白鳥として完璧な腕の動きを披露し、観客を魅了した。
 ミリアムは自身の最終日を当日に降板し、エロイーズが再び、今度はマルクと共に舞台に立ったのち、最後の配役は、アマンディーヌ・アルビッソンとジェレミー=ルー・ケールが演じた。

『白鳥の湖』 エロイーズ・ブルドン、パブロ・レガサ、トマ・ドキール(ロットバルト)、エロイーズのオデット。最後の配役はアマンディーヌ・アルビッソンとジェレミー=ルー・ケール
©Yonathan Kellerman/Opéra national de Paris

日本でも人気のエトワール、ジェルマンは 『コンタクトホーフ』で新境地

 男性エトワールたちの降板で、2016年末にジークフリートを踊ってエトワールになったジェルマン・ルーヴェが代役に入ることが期待されたが、彼は、『コンタクトホーフ』への参加を熱望し、ガルニエ宮で連日出演。唯一のエトワールとして26人からなる舞台を率いてバウシュのバレエ哲学を披露した。

『コンタクトホーフ』 エトワールのジェルマン・ルーヴェはバウシェ作品への並々ならぬ意欲で熱演
©Julien Benhamou/Opéra national de Paris

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