海外ツアーを経て凱旋! Noism0+Noism1『マレビトの歌』

カルチャー|2026.1.20
文=小野寺悦子(編集・ライター)、撮影:松橋晶子

 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館専属舞踊団Noism Company Niigataが、Noism0+Noism1『マレビトの歌』を上演。2023年に初演された注目作で、2025年冬公演としてこのたび改訂版が披露された。

Noism0+Noism1『マレビトの歌』

 金森穣演出振付により、初の野外公演として「黒部シアター2023春」で創作された本作。金森自身「初演のときからいいものができたという手応えがあった」と言い、「第2の『NINA』(2005年初演のNoism初期の代表作『NINA―物質化する生け贄』)」と誇る自信作だ。
 昨夏は演劇の聖地・利賀村「SCOT サマー・シーズン 2025」で再演を、秋にはスロベニアとイタリアで国境をまたいで開催された「Visavì Gorizia Dance Festival(ヴィザヴィ・ゴリツィア・ダンス・フェスティバル)」で6年ぶりに海外公演を行い、このたび新潟と埼玉で凱旋公演を果たしている。

金森穣、井関佐和子

 今回の凱旋公演は新演出の改訂版での上演となり、金森が舞踊家として新たに参加。冒頭、金森と井関佐和子のデュエットから舞台は始まる。二人の動きは一切の無駄も隙もなく、そぎ落とされた身体がただ美しい。自由度をもって空気を動かし、柔らかく一つに重なっていく。この二人にしか描けない目映い景色がそこにある。
 やがて金森は去り、井関は一人舞台を彷徨う。

 タイトルにある「マレビト」は民俗学者の折口信夫が提唱した概念で、他界(共同体の外部)から現世を訪れる神や霊的な存在を指す。金森はその概念に惹かれ、彼が近年取り組んできたテーマ“個と集団”“彼岸と此岸”を重ね合わせる。
 井関は「マレビト」であり、極めて異質な者として舞台上にあり続ける。作中は『Fratres』のシーンが登場し、舞踊家たちがフードを被り踊る。無名の集団が淡々と蠢く様は、ある種宗教的であり儀式的だ。井関は集団とは相容れず、ひりひりと孤立を深めていく。
 集団の絆は強く、禁欲的で、乱れることなく息を合わせる。個と集団の不調和はあきらかで、両者の拮抗が緊張感を高めていく。集団の純度は他者を排除し、そこに不寛容な社会に対するメタファーが見え隠れする。

 楽曲は全編アルヴォ・ペルト。物語性はなく、身体とテーマでみせる。それでいてドラマティックな世界が立ち上がる。観る者は舞踊家たちに自らを重ね、幾つもの物語が生み出されていく。

 舞踊家たちの忠誠は揺るぎなく、疑いなく澄んだ瞳で一つ方向を向く。一挙手一投足に日々の鍛錬が見え隠れし、それが集団を確固たるものにする。彼らは力強く、同時にどこか肩の力が抜けた感がある。彼らはラストではじめて個に振り切り、集団から解き放たれる。
 井関の孤高は鬼気迫るかのようで、舞踊へ献身の限りを尽くす。そこで切り開いた境地はもはや凄まじいほど。
 ラスト、取り残された井関が静かに舞台を去っていく。彼女のシルエットはどこか救いにも、希望にも見える。

 初演からステージを変え、蓄積されてきた密度の高い60分。着実に精度を増したNoismと、金森の新たなフェーズに圧倒された。
(2025年12月20日 彩の国さいたま芸術劇場)

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