今年はアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルら5部門計5名が受賞
世界の優れた芸術家に贈られる第36回高松宮殿下記念世界文化賞(公益財団法人 日本美術協会主催)受賞者が決定。オークラ東京を会場に、合同記者会見が開催された。
1988年に日本美術協会によって創設された高松宮殿下記念世界文化賞。国際理解の礎となる文化芸術の発展に貢献した芸術家に感謝と敬意を捧げその業績を称える賞で、世界の芸術家を対象に、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5部門で選考が行われている。
受賞者の選考は、国際顧問であるランベルト・ディーニ(元伊首相)、クリストファー・パッテン(英、前オックスフォード大学名誉総長)、クラウス=ディーター・レーマン(独、元ゲーテ・インスティトゥート総裁)、ジャン=ピエール・ラファラン(元仏首相)、ヒラリー・ロダム・クリントン(米、元国務長官)の各氏らが中心となり、候補者を推薦。その推薦リストに基づき日本の選考委員会が受賞候補者を選び、日本美術協会理事会で最終決定される。
今年の受賞者は、ピーター・ドイグ(絵画部門/イギリス)、マリーナ・アブラモヴィッチ(彫刻部門/セルビア)、エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ(建築部門/ポルトガル)、アンドラーシュ・シフ(音楽部門/イギリス)、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル(演劇・映像部門/ベルギー)の5名で、それぞれメダルと感謝状、賞金1,500万円が贈られた。

絵画部門 ピーター・ドイグ
現代美術における絵画の一潮流「新しい具象(ニュー・フィギュラティブ・ペインティング)」の代表的画家。映画などから得たイメージや過去の記憶をもとに豊かな色彩と独特の筆致で風景や人物を描く。「画家の中の画家」と呼ばれ、世界で最も重要な画家の一人と評価されている。2020年に日本で初となる大規模個展を開催し話題に。



彫刻部門 マリーナ・アブラモヴィッチ
アーティストが自らの身体を使って表現し、時に観客も作品の一部となる「パフォーマンス・アート」の先駆者。2010年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で行った《アーティスト・イズ・プレゼント》では約3カ月・計700時間以上座り続け、無言で観客と見つめ合うパフォーマンスを実施。85万人を集め、同館の観客動員記録を更新した。



建築部門 エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ
モダン建築と自然を融合させた建築を次々と生み出し、世界的評価を受けるポルトガル建築界の第一人者。代表作に、旧修道院を改修した国営ホテル『ポウザダ・モステイロ・デ・アマレス』(1997年)など。2011年プリツカー賞、18年ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞。米ハーバード大学やスイス・チューリヒ工科大学など世界各地の建築学校で教壇に立ち、後進の育成にも努める。



音楽部門 アンドラーシュ・シフ
現代における最高峰のピアニストの一人。バッハ、モーツァルトらをレパートリーとし、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲によるリサイタルも行う。1999年に自身の室内オーケストラ「カペラ・アンドレア・バルカ」を設立。オーケストラの指揮もするなど、ピアニストにとどまらない音楽家として幅広く活躍する。89年にバッハ『イギリス組曲』で第32回グラミー賞受賞。2014年英国よりナイト爵位を授与された。



演劇・映像部門 アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
ベルギー出身の振付家・ダンサー。1983年に設立した自身のダンス・カンパニー「ローザス」の芸術監督として、80年代以降の世界のコンテンポラリー・ダンス界を牽引。代表作に、『ローザス・ダンス・ローザス』(83年)、『ドラミング』(98年)など。教育活動にも熱心に取り組み、1995年にブリュッセルに舞台芸術学校「P.A.R.T.S.」を設立し、次世代のアーティストを育てている。

合同記者会見の後は、受賞者の個別会見が開かれた。ここではケースマイケルの会見の模様をお届けしよう。
――ダンスに興味を持ち始めたのは?
自分の中に自然にあったものだと思っています。
私が小さい少女だったころ、母にダンスがしたいと言いました。すると母は村にあるダンス教室に連れて行ってくれました。若い先生が教えるダンス教室で、バレエのほか、ジャズダンスも教えていましたね。その後、モーリス・ベジャールの舞台学校ムードラに入学することになりました。ベジャールの20世紀バレエ団が最も花開いていた時代で、また違う世界が開けたわけです。次第にムードラだけがダンスではないと考えるようになり、ニューヨークに行くことを決意しました。そこでポスト・モダンダンスを体験し、自分はバレエだけでは満足できないと考え始めるようになります。ダンスというものは他の芸術とのつながりもあるんだ、広い世界があるんだということを感じた時代でした。
――日本とのつながりについて。
私の中で日本という国はとても大切な存在になっています。私が『ローザス・ダンス・ローザス』を作った時の第1世代のダンサーに池田扶美代さんがいます。彼女がまだ17、18歳くらいの時で、彼女を通して日本というものを体験しています。私の舞台芸術学校「P.A.R.T.S.」にも日本人の生徒がいますし、ローザスには何名も日本人のダンサーが在籍していました。
私はベルギー人であり西洋人ですが、若い東洋の方々を通して、哲学というものが自分の中で非常に重要な考え方の一つになりました。何かを見返したり、内省したりする時の一つのツールとして、彼女たちの考え方が大きく影響を与えてくれています。それを通して、世界の見方も全く変わっていきました。
――最新の作品、今後の活動について。
今ジャック・ブレルの音楽を使った作品に取り組んでいます。あとは、ビバルディの『四季』に基づいた作品も作っています。これはモロッコの振付家との共同作品で、自然がテーマになっています。
来年はフィリップ・グラスの音楽を使った新たな作品を考えています。抽象的で、かつ形式的なものとして、繰り返しや回転が多い作品になる予定です。
それとは別に、第5世代の『ローザス・ダンス・ローザス』を今後また進めていこうと考えています。新たなダンサーも加わっていきます。『ローザス・ダンス・ローザス』は83年に初演していますが、ローザスの新たな言語というものを、この第5世代の新しいダンサーを通して伝えていければと考えています。
――現代においてダンスが果たす役割とは?
人間は常にダンスをしてきました。悲しみを感じている時、また喜びを感じる時も踊り続けてきましたし、ダンスを通して美しいものを表現し、自分の身体を通して何かを伝えていくという意味で、ダンスという形態が取られてきたと思っています。この私たちの身体というものは、今ここに存在しているもので、その身体を通して、過去や過去から未来、未来の間にある今、自分の現在を表現していくものがダンスだと考えています。
身体の動き自体がまずあり、そこにいろいろな感情が加わり、そして知的な部分もあり、精神性との結びつきもあり、宇宙との繋がりも感じられる。ダンスにはいろいろな層があり、それでもダンスというものは誰でも踊れると考えています。ダンスはみなが踊れるものなのです。

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