パリ・オペラ座バレエ団 『PLAY』©Fukuko Iiyama

パリ・オペラ座バレエの熱い夏③~『PLAY』、〈バレエ・アステラス〉に学校生徒、京都バレエ団にマチュー・ガニオが客演!

カルチャー|2025.10.1
文=渡辺真弓(オン・ステージ新聞編集長、舞踊評論家) 

遊び心満載。新国立劇場がガルニエ宮に変貌。 アレクサンダー・エクマン振付『PLAY』

 新国立劇場バレエ団が、ロンドン公演に出発したのと入れ替わりに来演したパリ・オペラ座バレエ団。四十数名のダンサーに、13名のミュージシャンという、通常より小規模の編成だが、鬼才アレクサンダー・エクマン振付『PLAY』を上演し、大きな話題を呼んだ。エクマンは、1984年スウェーデン生まれの41歳。2024年パリ・パラリンピック開会式の演出を手がけたことでも知られる。その彼が、2017年にパリ・オペラ座からの委嘱で創作したのが『PLAY』だ。

『PLAY』©Fukuko Iiyama

 1時間半の作品には、遊び心が満載。プロセニアムには、パリのガルニエ宮のだまし絵の緞帳がかけられ、客席に足を踏み入れた瞬間から、パリにいるような錯覚に陥る。グリーンのカバーのプログラム冊子も、サイズがパリ仕様なのが好評で、たちまち完売に。
 第1幕では、子供時代を、第2幕では、大人のビジネス社会を描いている。圧巻は、第1幕最後に天井から舞台一面に振り注ぐグリーン・ボールの雨である。上の階から見下ろすと、オケピットの上までグリーンピースの絨毯が広がっているように見え、壮観だ。

『PLAY』©Fukuko Iiyama

 ダンサーたちは、グリーン・ボールのほか、白いキューブと戯れたり、ヘルメットをかぶって、角の生えたフナーフという架空の生き物に扮したりするが、個々の主張の強さや存在感はさすが。エトワール級の参加はなくとも、ソロでも群舞でも、個々の瞬発力や敏捷性は際立っており、それが作品を一層輝かせている。改めてコンテンポラリー・ダンスにおいても一級のカンパニーであることを実証した。(7月25日〜27日 新国立劇場オペラパレス)

『PLAY』©Fukuko Iiyama

〈バレエ・アステラス2025〉に パリ・オペラ座バレエ学校が参加

 新国立劇場主催の〈バレエ・アステラス〉。第15回の今年は、英国ロイヤル・バレエ団の高田茜と平野亮一が客演し、英国バレエの生んだ振付家ウィールドンとスカーレットの秀作を披露したのをはじめ、世界5カ国8バレエ団から16名が参加。さらに「世界のバレエ学校」招待校として、名門パリ・オペラ座バレエ学校が来日、新国立劇場バレエ研修所との日仏若手交流が実現したのが特筆される。
 第1部のオープニングを飾ったのは、バレエ研修所で、牧阿佐美が芥川也寸志の音楽に振り付けた『トリプティーク~青春三章~』を踊った。

新国立劇場バレエ研修所『トリプティーク~青春三章~』©Takashi Shikama

 パリ・オペラ座バレエ学校は、第2部の最初に登場。『ゼンツァーノの花祭り』よりパ・ド・ドゥ、『ナポリ』よりパ・ド・シスとブルノンヴィルの名作2曲を踊ったが、特に男子生徒の洗練された足さばきや跳躍に目を見張った。優れた教育の成果と言えるだろう。

パリ・オペラ座バレエ学校『ゼンツァーノの花祭り』©Takashi Shikama

 なお、来日組でオペラ座バレエに入団予定なのは、『ゼンツァーノの花祭り』を日替わりで踊ったマノン・バランジェとジャンヌ・ラルシュヴェクのほか、アリシア・フェレイラ=カゼヴェッキエ、アナイス・モラン、アドリアン・ムラン、カミッロ・ペトキ。バレエ団と共に来日する日もそう遠くないだろう。
(7月18日〜19日 新国立劇場オペラパレス)

パリ・オペラ座バレエ学校『ナポリ』©Takashi Shikama

エトワール引退後のマチュー・ガニオが京都に客演。 京都バレエ団〈アーティスト・スペシャルガラ〉

 今年3月1日に『オネーギン』を踊って、パリ・オペラ座バレエ団を引退したマチュー・ガニオが、それからまもなく京都バレエ団に客演してくれたのは、ファンにとってまたとない贈り物であった。

京都バレエ団〈アーティスト・スペシャルガラ〉より『RENCONTRE(出逢い)』エロイーズ・ブルドン、マチュー・ガニオ 撮影:古都栄二(テス大阪)

 この日のために、旧知の間柄のファブリス・ブルジョワが振り付けた新作『RENCONTRE(出逢い)』と『ロミオとジュリエット』からの抜粋は、いずれも、オペラ座のプルミエール・ダンスーズ、エロイーズ・ブルドンとの共演で、オペラ座バレエならではのエレガンスの極致を見せた貴重なひとときとなった。『RENCONTRE』は、シューベルトの音楽に振り付けられたもので、身振りやステップにロビンズの『アザー・ダンス』へのオマージュが垣間見える。円熟の域にある二人だけに、何気ない視線のやり取りにも詩情が漂い、実に味わい深い。

京都バレエ団〈アーティスト・スペシャルガラ〉より 『ロミオとジュリエット』エロイーズ・ブルドン、マチュー・ガニオ 撮影(1枚目):瀬戸秀美/撮影(2枚目):古都栄二(テス大阪)
『RENCONTRE(出逢い)』撮影:瀬戸秀美

 幕開きを飾ったブルジョワ振付『ラ・バヤデール』第2幕より婚約の祝宴の場をはじめ、ゲストの西島数博のソロ『ボレロ』、ミシューチン振付『セーラーダンス』、堀内充振付『ロマンシング・フィールド』の小品はいずれもセンスがよく、京都バレエ団のOB、OGを交えた、質の高いステージに拍手を送りたい。(8月3日 ロームシアター京都)

『RENCONTRE』『ラ・バヤデール』等を振り付けたブルジョア(パリ・オペラ座メートル・ド・バレエ)のリハーサル風景。『ラ・バヤデール』 光永百花、鷲尾佳凛 撮影:古都栄二(テス大阪)

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