8月に、世界のバレエ界の頂点に立つ名門パリ・オペラ座バレエ団と英国ロイヤル・バレエ団の今が旬のスターたちが集い、美と技を競う“バレエの祭典”が開催された。これは、2017年の第1回に続く企画で、「スプリーム」のタイトルに相応しい、至高のバレエの饗宴が3つのプログラムにわたって繰り広げられた。

心躍る英仏ペア、贅沢な趣向
所見のBプロは、両バレエ団の合同公演で、第1部と第2部に、オペラ座チーム3組、ロイヤルチーム4組が出演。第3部では、『ラ・バヤデール』よりハイライトが合同で踊られたが、普段は見られない英仏ペアの組み合わせが実現するなど、贅沢な趣向が話題を集めた。
第2部では、ロイヤルの金子扶生とワディム・ムンタギロフが、『ロミオとジュリエット』のバルコニーのパ・ド・ドゥを情熱的に踊れば、サラ・ラムとウィリアム・ブレイスウェルは、『白鳥の湖』より第2幕のアダージョで抒情性を打ち出し、ドラマティック・バレエの伝統を強烈に印象づけた。


これに対して、オペラ座のエトワール・カップル、ブルーエン・バティストーニとポール・マルクは、『グラン・パ・クラシック』で、究極のエレガンスと洗練されたテクニックで見事に拮抗。これぞオペラ座バレエの精華と言うに相応しく、対抗戦を盛り上げた。とりわけ、着地のタイミングがどれもぴたりと合ったのは感嘆もの。
新進エトワールや豪華ゲストも参加
Cプロでは、オペラ座の6組に、ゲストのロベルト・ボッレが加わって、全11曲を披露。予定されていたマチアス・エイマンとギヨーム・ディオップが来日できなかったのは残念だが、代わって参加の若手のミロ・アヴェックやロレンツォ・レッリが健闘し、オペラ座の未来に希望をつなげた。
このプロでも、傑出していたのは、バティストーニとマルクのペアで、ロシア・バレエの『タリスマン』にフランス的なエレガントな香りを加えて踊ったほか、高度な技巧が満載の『エスメラルダ』を華麗に踊りこなし、間違いなく今後のオペラ座をリードしていくだろうと確信させた。

次世代スター候補も、眩い輝きを放つ!
ベテランのオニール八菜は、アヴェックと『グラン・パ・クラシック』を踊ったほか、ボッレと『ル・パルク』を踊り、成熟した味わい。パク・セウンはレッリと組んで、『眠れる森の美女』と『くるみ割り人形』のヌレエフ版のグラン・パ・ド・ドゥを悠然と。新進エトワールのロクサーヌ・ストヤノフとアントニオ・コンフォルティは、ルグリ版『シルヴィア』とジャン=ギヨーム・バール振付『ア・ラ・マニエール・ドゥ』で洗練されたフランスのエスプリを表現。カン・ホヒョンとアントワーヌ・キルシェールは、『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』と『ラ・シルフィード』を、いとも軽やかに踊り、逸材ぶりを印象づけた。


Aプロを見逃したのは残念だったが、二つのプロを通して、英国ロイヤル・バレエの円熟のパートナーシップに対して、パリ・オペラ座バレエでは、個々のエレガントなテクニックを堪能。好対照の至芸を満喫することができたのは、実に幸運だった。
(Aプロ:ロイヤルチーム8月1日〜3日 Bプロ:合同公演8月5日〜7日 Cプロ:オペラ座チーム8月9日〜11日 東京文化会館)


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