太陽の地図帖『矢沢あい『NANA』の世界』に掲載しきれなかったこぼれ話を、本誌の内容を交えて再編集したweb太陽特別編。全5回の第3回目。
――トラネスの音楽は私の中ではかなり具体的に鳴り響いているのですが、音の出ない漫画でそれを表現するのは本当に難しく、もどかしいです。でもこのイラストはイメージにだいぶ近づけたかも?
と、『NANA』の作者・矢沢あいが語る(*1)のが、このイラストである。

作者も苦慮しているように、漫画は「音が出ない」。しかし、『NANA』の世界では「音楽」そして「バンド」が重要なテーマである。
「あの頃 世間を賑わせた 2大バンドの売り上げの記録は 今も誰にも破れていない」(*2)と語られる伝説のバンド、「TRAPNEST」(トラネス)と「BRACK STONES」(ブラスト)は果たしてどんな音楽を奏でていたのか?と気になる読者は多いだろう。
「パンクロック」のバンド、ブラスト
ブラストの音楽はメンバーのファッションから推測しやすい。
ナナやノブ、シンは王道の「パンクス」であり、ナナは“パンクの女王”ヴィヴィアン・ウエストウッドの服を着こなし、ノブは「セックス・ピストルズ」のフロントマン、ジョニー・ロットンのようなパンクスタイルをしている。
東京で参加したライブイベントは「PUNK NIGHT」であり、ガイア・レコードのディレクターの松尾に「パンクバンド メジャーでヒットさせようなんて やっぱ無謀なんだよ」と言われようとも、目指すところは「パンク・ロック」だ。

「シングル アルバム 共にミリオンセラー」なトラネス
では、トラネスはどんな音楽なのだろうか?
第一のヒントはノブの言葉。
「いや―― でもマジすげえよ レンの書く泥臭い曲が なんで あんな今時なオッシャレーなサウンドに仕上がるわけ?」と言っている。
デビュー3年目当時、「シングル アルバム 共にミリオンセラー」と語られる人気バンドであり、作曲のほとんどを「パンクス」のレンが手がけているとはいえ、この言葉から推察すると、パンクというより、現代的なアレンジがなされた「ロック」なのではないだろうか。

アニメ版と映画版の音楽から推測すると……
『NANA』はテレビアニメ化も実写化もされ、それぞれが大ヒットし、音楽もまた印象的で日本の音楽シーンを席巻した。
特にお勧めしたいのが、2006年に放映されたテレビアニメ『NANA』の曲だ。
「それぞれのバンドのイメージに近いCDを数枚ずつ渡して曲を考えてもらいました」(*3)と作者の矢沢あいが語っているうえ、特に土屋アンナの歌声は「イメージにぴったり」とお墨付きを与えているのだ。
歌唱キャストを、ナナは土屋アンナ、レイラはOLIVIAが担当している。CDとしては『NANA BEST』に収録されている。ぜひ聴いて、『NANA』の世界を体感してみてほしい。

それにしても、気になるのは「それぞれのバンドのイメージに近いCD」とはどんなCDだったのか?ということ。
詳細は明かしてもらえなかったが、『NANA』制作時にBGMとして聴いていたというCDの一部を撮影させてもらった。
『NANA』の世界をイメージするエッセンスとして、こちらもぜひ参考にしてみてほしい。
*1・3 太陽の地図帖『矢沢あい『NANA』の世界』より
*2『NANA』第12巻136頁より

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