『ロミオとジュリエット』 高田茜&平野亮一

英国ロイヤル・バレエ団 4年ぶりの来日で、 稀にみる熱狂を巻き起こす!

カルチャー|2023.7.24
文=渡辺真弓(オン・ステージ新聞編集長、舞踊評論家、共立女子大学非常勤講師)舞台写真 撮影=長谷川清徳

 英国ロイヤル・バレエ団が4年ぶりに来日し、東京、大阪、姫路の3都市で12公演を開催した。プログラムは、スターの顔見せ〈ロイヤル・セレブレーション〉、お家芸のマクミラン版『ロミオとジュリエット』、それに〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉(姫路のみ)の3種類。連日満員の活況を呈し、改めて同バレエ団の人気のほどが伺えた。

〈ロイヤル・セレブレーション〉より『ジュエルズ』”ダイヤモンド” マリアネラ・ヌニェス&リース・クラーク
『ロミオとジュリエット』 サラ・ラム&スティーヴン・マックレー

〈ロイヤル・セレブレーション〉でスターダンサーが一堂に!

 初日を飾った<ロイヤル・セレブレーション>。まず座付きのクリストファー・ウィールドン振付『FOR FOUR』とファースト・ソリストのヴァレンティノ・ズケッティ振付『プリマ』の2作品はいずれも日本初演で、男女の現代版『パ・ド・カトル』の競演が興奮をかき立てた。『FOR FOUR』は、シューベルトの「死と乙女」第2楽章に振付けられたもので、マシュー・ボール、ジェイムズ・ヘイ、ワディム・ムンタギロフ、アクリ瑠嘉の4人の名手が、音楽を奏でるように自在に踊る。続く『プリマ』は、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲にのせて、フランチェスカ・ヘイワード、金子扶生、マヤラ・マグリ、ヤスミン・ナグディの4人の女性スターたちが美を競う。衣装がカラフルでデザインが奇抜(ロクサンダ・イリンチック)。精鋭揃いの中で、金子のシャープかつしなやかな持ち味が光った。両作品で、ロイヤル・オペラハウスの第1ソロ・コンサートマスターのヴァスコ・ヴァッシレフの演奏が際立った。

『FOR FOUR』 マシュー・ボールとワディム・ムンタギロフ
『プリマ』 金子扶生

最先端の作品に続き、アシュトン、バランシンの名作にため息

 3本目のアシュトンの名作『田園の出来事』は、ツルゲーネフの原作により、貴族の家庭に招かれた若き家庭教師が引き起こす波紋を詩情豊かに描く。登場人物の一人一人が役を生き、芝居を見ているような展開に、バレエ団の誇る演劇性が遺憾なく発揮されていた。主役のナターリヤを演じたナターリヤ・オシポワが、家庭教師のベリヤエフ(ウィリアム・ブレイスウェル)に寄せる思いを切々と訴える。当夜の最後は、バランシン振付『ジュエルズ』より"ダイヤモンド" で、人気スターのマリアネラ・ヌニェスがリース・クラークを相手に宝石の如く燦然と輝き、ゴージャスに幕を閉じた。

『田園の出来事』 ナターリヤ・オシポワ&ウィリアム・ブレイスウェル
『ジュエルズ』"ダイヤモンド”

十八番の『ロミオとジュリエット』で人材の豊富さに感嘆

 続く『ロミオとジュリエット』では、何と8公演で、主役が日替わりというサービスぶり。現在のバレエ団がいかに豊富な人材を擁しているか感嘆せざるを得ない。
 東京公演初日(6月28日)は、サラ・ラムとスティーヴン・マックレーの組み合わせ。長年ペアを組んできた二人だけに、呼吸がぴったりで、究極のパートナーシップを見た思いがした。7月1日(マチネ)は、アナ・ローズ・オサリヴァンとマルセリーノ・サンベの清新なペア。可憐で初々しいジュリエットと、彼女に熱い想いを寄せるロミオの共演は、バレエ団の明るい未来を象徴するようであった。

『ロミオとジュリエット』 サラ・ラム&スティーヴン・マックレー

千秋楽を飾るなど、日本人のプリンシパルが大活躍! 

 2日は、高田茜と平野亮一という、これまた夢の組み合わせ。情熱がほとばしり出るようなスケールの大きさに感動した。

『ロミオとジュリエット』 高田茜&平野亮一

 5日の大阪公演では、主役に金子扶生とワディム・ムンタギロフが登場。金子は地元の地主薫バレエ団出身、ティボルトの平野も大阪生まれ、尼崎市の平野節子バレエスクール出身で、今回は、ケヴィン・オヘア監督の配慮か、日本人ダンサーに故郷での「凱旋公演」の栄誉を与えてくれたことに深く感謝。主役の気品溢れるパートナーシップはもちろん、平野がロミオとティボルトを別人のように演じ分けたこと、マキューシオのアクリ瑠嘉やマンドリン・ダンスの五十嵐大地らの活躍に目を見張った。

『ロミオとジュリエット』 金子扶生&ワディム・ムンタギロフ(撮影=森口ミツル)

 東京公演で存在感を放ったティボルトのギャリー・エイヴィスやマキューシオのジョセフ・シセンズなどの名演も忘れがたい。こうした人材があって、マクミラン版の重厚さが維持されているのだ。
 毎晩、客席総立ち、近年のバレエ公演では稀に見る熱狂を巻き起こした本公演。クーン・ケッセルズの名指揮ぶりも称賛に値する。

[公演DATA]                    
6月24日~7月2日 東京文化会館
7月5日       大阪・フェスティバルホール
7月8日       姫路・アクリエひめじ

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