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2024年春お薦めバレエ映画二選 『オリガ・スミルノワのジゼル in cinema』/ロイヤル・バレエ『マノン』

アート|2024.3.11
文=小野寺悦子(編集・ライター)

この春、バレエ映画で芸術に触れる

バレエに興味はあるけれど、ステージを観に行くのはちょっぴり敷居が高い……。
ならば映画館の大画面でその魅力に触れてみるのはいかがだろうか。
バレエ初心者からバレエファンまで楽しめる、
この春お薦めのバレエ映画2作品を紹介しよう。

祖国ロシアを離れオランダへ 『オリガ・スミルノワのジゼル in cinema』

オリガ・スミルノワ、ジャコポ・ティッシ

 ロシアの名門バレエ団、ボリショイ・バレエで次世代を担うスターとして将来を嘱望されていたオリガ・スミルノワ。しかし2022年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始すると、戦争への反対を表明し、祖国ロシアを離れオランダへ。ボリショイ・バレエからオランダ国立バレエに電撃移籍し、大きなニュースとして取り上げられた。
 彼女が現在所属するオランダ゙国立バレエは、全世界20カ国から90名以上のダンサーが集うヨーロッパの名門バレエ団の一つ。『オリガ・スミルノワのジゼル in cinema』は昨年10月にオランダ国立歌劇場で収録され、新天地で主演を踊るスミルノワの今を捉えている。

オリガ・スミルノワ

 『ジゼル』は中世ドイツを舞台に描かれる悲恋の物語でありロマンティックバレエの最高峰。農⺠の娘ジゼルは貴族のアルブレヒトと恋に落ちる。しかしアルブレヒトは自身が貴族であり、また婚約者がいることをジゼルに隠していた。あるときその事実を知ったジゼルは、絶望のあまり取り乱し息絶えてしまう。
 ジゼルは結婚前に死んだ花嫁の精霊「ウィリ」の集まる森に埋葬される。ウィリたちはそこに迷い込んできた男を死ぬまで踊り狂わせていた。ある夜森を訪れたアルブレヒトはウィリたちに捕らえられ……。

オリガ・スミルノワ、ジャコポ・ティッシ

 スミルノワはボリショイ仕込みの高い技巧をもとに、一幕では村娘ジゼルの純朴で初々しい恋を、二幕では一転静謐な気配でウィリの深い哀しみを全身であらわしていく。アルブレヒト役はボリショイ・バレエの元プリンシパルで、スミルノワと同じくボリショイ・バレエを離れたジャコポ・ティッシ。イタリア出身のダンサーで、すらりとした⻑身とノーブルな雰囲気がアルブレヒトによく似合う。サポートも巧みで、スミルノワとのパートナーシップも見所の一つ。

© Jan Willem Kaldenbach

オリガ・スミルノワ
ロシア・サンクトペテルブルグ出身。2011年にワガノワ・バレエ・アカデミーを首席で卒業し、ボリショイ・バレエにソリストとして入団。ロシアのウクライナ侵攻を受け祖国ロシアと名門バレエ団を離れ、オランダ国立バレエに電撃移籍を果たす。これまでにバレエ界のアカデミー賞といわれるブノワ賞(2013年)、レオニード・マシーン賞(2014年)などを受賞。2022年に雑誌DANCE EUROPE読者に「今年のダンサー」に選ばれた。

ウィリたち
ウィリにより命尽きるまで踊らされていく
オリガ・スミルノワ、ジャコポ・ティッシ

[上映情報]
『オリガ・スミルノワのジゼル in cinema』
公開日:3月8日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
出演:オリガ・スミルノワ、ジャコポ・ティッシほか
新演出・振付:ラシェル・ボージャン、リカルド・ブスタマンテ
改訂振付:マリウス・プティパ
原振付:ジャン・コラリ、ジュール・ペロー
美術・衣装:トゥール・ヴァン・シャイク
音楽:アドルフ・アダン
伴奏:オランダ・バレエ・オーケストラ
指揮:エルマンノ・フローリオ
撮影場所:オランダ国立歌劇場
撮影時期:2023年10月
上映時間:115分
配給:ALFAZBET 
配給・宣伝協力:dbi inc.
公式HP:https://alfazbetmovie.com/olgagisellejp/

©2024 ROH 2 Photographed by Andrej Uspenski ナタリア・オシポワ、リース・クラーク

ドラマティック・バレエの傑作を1週間限定公開! ロイヤル・バレエ『マノン』

 ケネス・マクミラン振付『マノン』は、『ロミオとジュリエット』『うたかたの恋―マイヤリング』と並ぶマクミランの代表作であり、ドラマティック・バレエの最高傑作といわれる人気作。初演から50周年を迎える今年、英国ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されたステージが特別映像を交えて1週間の期間限定で公開される。

 物語の舞台は18世紀フランス・パリ。神学生のデ・グリューは少女マノンと出会い恋に落ちる。しかしマノンはその美貌ゆえ男たちの注目の的で、マノンもまた欲望に正直だった。兄レスコーに富豪ムッシュG.M.の愛人にならないかと誘われ、豪奢な生活によろめくマノン。彼女は高級娼婦となり、やがて破滅へと導かれていく……。

 タイトルロールのマノンを踊るのはプリンシパルのナタリア・オシポワ。高い身体性とドラマティックな演技力に定評を持ち、ファムファタールを魅惑的に体現していく。デ・グリュー役は2022年にプリンシパルへ昇進したリース・クラーク。190cm近い長身に甘いマスクの持ち主で、オシポワとは昨年夏のロイヤル・バレエ来日公演『ロミオとジュリエット』でも共演している。

 そのほか、ベガー・チーフ(物乞いの頭)役の中尾太亮、高級娼婦役の崔由姫と前田紗江、マダムの館でのダンシング・ジェントルマンの踊りではアクリ瑠嘉が出演。またマノンに屈辱を与える看守役をドキュメンタリー映画『バレエボーイズ』のルーカス・B・ブレンツロドが務めるなど、脇を固めるダンサー勢にも注目したい。

リース・クラーク
ナタリア・オシポワ、リース・クラーク

[上映情報]
ロイヤル・バレエ『マノン』
公開日:4月5日(金)〜4月11日(木)、TOHO シネマズ 日本橋ほか1週間限定公開
出演:
マノン:ナタリア・オシポワ
デ・グリュー:リース・クラーク
レスコー:アレクサンダー・キャンベル
ムッシュG.M.:ギャリー・エイヴィス
レスコーの愛人:マヤラ・マグリ
マダム:エリザベス・マクゴリアン
看守:ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド
ベガー・チーフ(物乞いの頭):中尾太亮
高級娼婦:崔由姫、メリッサ・ハミルトン、前田紗江、アメリア・タウンゼント
三人の紳士:アクリ瑠嘉、カルヴィン・リチャードソン、ジョセフ・シセンズ
娼館の客:ハリー・チャーチス、デヴィッド・ドネリー、ジャコモ・ロヴェロ、クリストファー・サウンダース、トーマス・ホワイトヘッド
老紳士:フィリップ・モーズリー
娼婦、宿屋、洗濯女、女優、物乞い、街の人々、ねずみ捕り、召使、護衛、下男:ロイヤル・バレエのアーティスト
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
編曲:マーティン・イェーツ
(選曲:レイトン・ルーカス、協力: ヒルダ・ゴーント)
美術:ニコラス・ジョージアディス
照明デザイン:ジャコポ・パンターニ
ステージング:ラウラ・モレ―ラ
リハーサル監督:クリストファー・サウンダース
レペティトゥール:ディアドラ・チャップマン、ヘレン・クローフォード
プリンシパル指導:アレクサンドル・アグジャノフ、リアン・ベンジャミン、アレッサンドラ・フェリ、エドワード・ワトソン、ゼナイダ・ヤノウスキー
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
コンサートマスター:セルゲィ・レヴィティン
指揮:クン・ケッセルズ
配給:東宝東和
公式HP:http://tohotowa.co.jp/roh/

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