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「マティス 自由なフォルム」 国立新美術館

アート|2024.3.14
坂本裕子(アートライター)

もうひとつのマティス芸術。切り紙絵の世界が拓く魅力

 20世紀フランスを代表する画家のひとりアンリ・マティス(1869-1954)。
 激しい原色を多用する表現で「フォーヴィスム(野獣派)」と呼ばれた活動の中心的な存在として、絵画における色彩を解放した彼は、「キュビスム」を提唱して形態の概念を解き放ったパブロ・ピカソと並び称される巨匠だ。
 フォーヴの画家といわれるが、その後、彼の作風はより単純化された線と鮮やかな色彩を持つ装飾的なものへと変化していく。
 マティスが絵画に求めたのは、線とそれが形づくるフォルム、そこに置かれる色をいかに画面に“ここちよく”構成するかであった。そのなかで見いだしたのが、彩色された紙をハサミで切って構成する「切り紙絵」の技法だ。それは、病を得た彼が、体力的に絵画制作が厳しかったからともいわれているが、決して余技にはとどまらず、マティス芸術のもうひとつの重要な創作として、豊かな実りをもたらしている。

制作中のマティス 1952年頃 ©photo Archives Matisse / D. R. Photo: Lydia Delectorskaya

 マティスは後半生を南仏ニースに過ごし、ホテルやアパルトマンを転々としながらそこをアトリエとして制作を続ける。切り紙絵はこの頃から本格化し、精力的に取り組まれ、最晩年のヴァンスのロザリオ礼拝堂の装飾に結実した。マティス芸術の集大成をもたらした技法といえる。

 この切り紙絵に焦点をあてた展覧会が国立新美術館で開催中だ。
 ニース市マティス美術館から、大作《花と果実》の初来日をはじめ、切り紙絵の優品が集結する。
 同館は、マティス本人とその遺族から寄贈された作品群を中心に、初期から晩年までの絵画、素描、版画、切り紙絵、彫刻などのほか、マティスが自宅に置き、その創作に欠かせなかった家具調度やオブジェも所蔵する。切り紙絵は世界でも有数のパブリック・コレクションとして、マティス芸術を追ううえで重要な存在となっている。

 切り紙絵を中心とした展覧会は日本では初の開催。
 また、切り紙絵を応用して室内の装飾や祭礼服などをデザインしたヴァンスのロザリオ礼拝堂の空間が、マケット(模型)や下絵の展示とともに実寸大で再現され、その精華をまさに体感できる。
 本展は、これまであまり紹介されることのなかった巨匠のもうひとつの芸術の本質に触れられる貴重な機会となるだろう。

 会場では緩やかな編年を、彼の創作のジャンルごとに5セクションで追いながら、切り紙絵の展開からヴァンスのロザリオ礼拝堂に至るまでをみていく。
 高い天井の空間を活かし、あちこちに制作中のマティスやアトリエの写真を拡大したパネルや映像などが掲示され、作家の姿やその空間、時代を感じられるのも嬉しい工夫だ。

 フランス北部に生まれたマティスは法律家になるためにパリで学んだのち、地元の法律事務所で働いていたが、体調を崩して入院。その際に母親から与えられた絵具箱をきっかけに絵画の道に目覚め、再度パリに出て、エコール・デ・ボザール(国立美術学校)の聴講生としてギュスターヴ・モローのもとで学ぶ。モローは、学生たちの個性を重視し、規範にとらわれない教育者であったといわれる。師は、「きみは絵画を単純化することになるだろう」とマティスの未来を喝破していたとか。そうした自由な空気のなかで、マティスはルーヴル美術館で古代美術や巨匠の古典的絵画も学びつつ、自身の表現を模索する。
 やがて友人と訪れた南仏トゥールーズやコルシカ島で輝く光に触れたマティスは、色彩の開放へと進んでいくことになる。

「セクション1 色彩の道」では、最初期からフォーヴィスムへと向かう時期の作品に、画家としてデビューするマティスの姿を追う。
 故郷から再度パリに出る前に描き、マティス自身が「私の最初の絵画」と称した《本のある静物》にはじまり、印象派や新印象主義に出会い色彩分割を試みた作品、そして1905年のサロン・ドートンヌで「フォーヴ」と称されるようになる補色や原色を使った作品が並ぶ。
 陶芸家アンドレ・メテの工房で制作した貴重な陶磁器などには、その初期から絵画にとどまらない表現を手がけていたことも感じられるはずだ。

「セクション1 色彩の道」展示風景から©Succession H. Matisse
アンリ・マティス《マティス夫人の肖像》1905年 油彩/カンヴァス 46×38cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
赤系と緑系の補色の対比を試した作品は、サロン・ドートンヌで「フォーヴ」と呼ばれるきっかけとなる作品へとつながる。
「セクション1 色彩の道」展示風景から
左:《蓋のある壺》1907年頃、右:《ダンス》1907年 ともにニース市マティス美術館蔵©Succession H. Matisse
初期の貴重なセラミックと木彫作品。のちの切り紙絵や装飾壁画「ダンス」に通じる要素を見いだせるだろう。

 1917年の滞在を契機に、マティスはニースでアトリエを転々としながら制作するようになる。
 アトリエには、1912年と13年の2度にわたるモロッコ旅行で影響を受けた東洋風の家具調度をはじめ、多様な文化を持つ自身のお気に入りの花瓶やテキスタイル、オブジェなどが飾られ、それらは、多く彼の絵画に描かれている。

「セクション2 アトリエ」では、マティスにとってのアトリエが単なる創作の場にとどまらず、自身の創作の重要な主題でもあったことを、室内画シリーズや彼が愛したオブジェとともにみていく。
 オダリスクの絵画と彫刻作品の共鳴、室内画に描かれるオブジェの数々からは、人体と空間の関係を追求した画家の意識とともに、アトリエが彼の尽きせぬ想像力の源泉であったことが見えてくる。

アンリ・マティス《横たわる裸婦Ⅱ》1927年(鋳造1953年) ブロンズ 29×51.5×16.5cm
オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
絵画作品でもよく取り上げられた横たわる女性のモティーフ。
「セクション2 アトリエ」展示風景から
デッサンの展示。デッサン集『デッサン―テーマとヴァリエーション』のシリーズも紹介されている。
いずれも ©Succession H. Matisse
「セクション2 アトリエ」展示風景から
マティスのオブジェのコレクションも来日。左は「赤い“ムシャラビエ(アラブ風格子出窓)”」。右は、彼がこよなく愛したという「ヴェネツィアの肘掛け椅子」。それぞれ描かれた絵画作品と並べてみられる嬉しい展示だ。
いずれも ©Succession H. Matisse
アンリ・マティス《赤い小箱のあるオダリスク》1927年 油彩/カンヴァス 50×65cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
東洋風の家具調度を配したなかに横たわる女性を描くオダリスクのテーマもまた、マティスを象徴する。カラフルな画面は実はとても周到な色彩の配置が試みられている。じっくりみてほしい。
アンリ・マティス《ロカイユ様式の肘掛け椅子》1946年 油彩/カンヴァス 92×73cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
画面いっぱいに描かれた肘掛け椅子は、マティスがこよなく愛したもの。会場では実際の椅子とともにみることができる。赤い背景に黄と緑のコントラストと、椅子の曲線のリズムが一体となった一作には、その想いがあふれているようだ。
アンリ・マティス《ザクロのある静物》1947年 油彩/カンヴァス 80.5×60cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
アトリエに置かれたモノにとどまらず、その空間自体がマティスにとっては重要なモティーフだった。ザクロの置かれたテーブルを描く本作も、壁とテーブル、椅子が、あるいは窓から見える植物と壁にかけられたレリーフが織りなす直線と曲線、内と外との関係性、そして色彩との響き合いに対する彼の深い追求が感じられる。

 1920年、マティスは、セルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュスの舞台「ナイチンゲールの歌」の舞台装置と衣装デザインを手がけている。
 1930年には、アメリカのコレクター、アルバート・C・バーンズから財団の装飾壁画の注文を受け、約13mの「ダンス」の制作に取りかかる。
 こうした経験は、マティスに大空間を装飾する仕事への意識を目覚めさせ、以後タペストリーのための下絵や準備習作としての大型の絵画作品も生み出された。
 また、「ダンス」の構想のため、このとき初めて色を塗った紙を切ったものを使って大画面の構成を考えた。

 「セクション3 舞台装置から大型装飾へ」では、装飾芸術としての彼の創作が紹介される。
 「ナイチンゲールの歌」の衣装には東洋の影響が感じられ、「ダンス」のための習作の数々は、バーンズ財団の壁画とともに、パリ市立近代美術館に所蔵されるサイズ違いで制作された《パリのダンス(ニンフたち)》や近年再発見された《未完のダンス》の実寸大映像と比較できる展示が嬉しい。
 絵画作品にとどまらず、空間を飾るためのデザインに対する彼の隔たりのないスタンスにも触れられるだろう。

「セクション3 舞台装置から大型装飾へ」展示風景から
バレエ・リュスの「ナイチンゲールの歌」の舞台衣装は、実際の上演風景とともに楽しめる。
上:アンリ・マティス《ダンス、灰色と青色と薔薇色のための習作》1935-1936年 エッチング/紙 29.7×80.3cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
下:展示風景
バーンズ財団の壁画〈ダンス〉の制作のために、マティスはいくつもの習作を残している。最初は小さな画面で試行されていたそれらは、やがて実寸の大きな壁面のカンヴァスに、長い竹竿を用いて描かれるようになる。この構図の調整に、色を塗った切り紙絵が用いられた。本展では、8点の小さな習作が、壁画の実寸映像とともに展示される。
アンリ・マティス《パペーテ – タヒチ》1935年 油彩/カンヴァス 225×172cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
タヒチ訪問時に、滞在したパペーテのホテルからみた光景に基づいて描かれた一作は、タペストリーにすることを企図して描かれたが、その途中経過においてマティスは仕上がりに満足できず、実現しなかったそうだ。この失敗を踏まえた2作目の下絵も制作されている。

 1940年頃、マティスは編集者テリアードとともに美術雑誌『ヴェルヴ』の挿絵の仕事もこなしている。ここでは、印刷による色の再現も考慮して、切り紙絵の技法が使われた。そして1947年に、切り紙絵を元にしたステンシルによる絵と自筆のテキストで構成された書物『ジャズ』を刊行する。
 この頃から切り紙絵は、マティスにとって構成を考える手段から、独立した表現として意識的に使用される技法となっていく。
 同時に、筆による墨のデッサンも、ひとつの作品に収斂(しゅうれん)する下絵ではなく、それぞれに自立した作品としてヴァリエーションが描かれるようになる。
 これらはカンヴァスを飛び出して、壁面を支持体として組み合わせ、構成された。彼のアトリエの壁はその創造のための場として機能していた様子が写真に残されている。

 「セクション4 自由なフォルム」では、切り紙絵と筆のデッサンの作品に、自由で変幻自在なフォルムの創造を見いだしたマティスの歓びを感じる。
 その到達の一作《花と果実》のおおらかで歌うような迫力の大画面はもちろん、『ジャズ』の全葉から、切り紙絵の代表作《ブルー・ヌードⅣ》や《アンフォラを持つ女》など、“ハサミでデッサンする”マティスの活き活きとした姿が浮かび上がる、幸福感あふれる空間だ。

アンリ・マティス《ポリネシア、海》1964年(1946年の切り紙絵に基づく) 羊毛のタペストリー 198×309cm ルーヴル美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託)©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
切り紙絵のマケットに基づいたタペストリー。青と水色の格子を背景に、海と空のいきもののモティーフが軽やかに舞い、浮遊する。切り紙の重なりすらも再現された職人の技はぜひ近くで!
左:アンリ・マティス《クレオールの踊り子》1950年 切り紙絵 205×120cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
右:展示風景
アフリカ系アメリカ人ダンサーから着想を得たとされる本作では、カラフルな幾何学的構成の背景に、植物のような踊り子が緑と青を基調にして浮かび上がる。躍動感あふれる姿は、切り紙絵の代表作である書物『ジャズ』にも通じるだろう。
上:アンリ・マティス《花と果実》1952-1953年 切り紙絵 410×870cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
下:展示風景
アメリカ人コレクターのヴィラにあるパティオの壁面装飾のために制作されたマケットのひとつ。4.1×8.7mを超える迫力の切り紙絵は、本展のための修復を経て日本初公開! 4弁の花と、3つの果実の組み合わせが、鮮やかに楽しげに配置され、そこにいるだけで幸せな気持ちになる。全部で4点のヴァリエーションが制作され、実際に陶板で制作されたのは《花束》だった。会場では、別のマケット《アポロン》の図案の一部を製陶した習作も展示され、その質感をも伝えてくれる。
左:アンリ・マティス《大きな顔、仮面》1951年 筆と墨/紙 75×75cm オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
右:アンリ・マティス《木(プラタナス)1951年 筆と墨/紙 150×150cm オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
切り紙絵と並行して制作されたのが筆によるデッサンだ。「顔」や歪曲した身体を描いた「アクロバット」のほか、「木」もそのモティーフに選ばれた。これらは下絵としてではなく、それぞれが独立した作品として描かれ、アトリエの壁を埋め尽くした。
アンリ・マティス《波》1952年頃 切り紙絵 51.5×160cm ニース市マティス美術館蔵  ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
青い紙を波線で切ったものを少しずらして上下に離して配置しただけなのに、みごとに波が浮かび上がる。茶目っ気すら感じさせる遊びごころある切り紙絵には脱帽だ。
アンリ・マティス《ブルー・ヌード IV》1952年 切り紙絵 103×74cm オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
マティスの切り紙絵を代表する4点の連作のうちのひとつ。なかでも切り紙の重なりと、背後のデッサンの跡がもっとも多く残る一作で、モノとしての紙の存在を強く印象づけ、構想の軌跡もよりあざやかにたどることができる。

 最晩年の1948年から51年の4年間、マティスはヴァンスのロザリオ礼拝堂の建設に専心した。それは、ステンドグラスのデザインから壁面を飾る陶板絵のほか、キリスト像などの典礼用の調度品に、さまざまな時期に対応する祭服に至るまで、切り紙絵と筆によるデッサンを昇華させた、“総合芸術”としてのマティスの集大成となるものだった。
 同時に、それまでは基本的にひとりの画家としての創作に終始していたマティスにとって、建築家オーギュスト・ペレ、ガラス職人ポール・ボニ、陶芸職人オバーニュ・ブルディヨンといった、さまざまな職人たちとの協働の創造行為でもあったのだ。

 「セクション5 ヴァンスのロザリオ礼拝堂」では、その生涯の最後にマティスが到達した究極の芸術空間を体感する。
 注目は、祭礼のためのカズラ(上祭服)のためのマケット。マティスは緑色、赤色、紫色、白色、黒色、薔薇色の6色を切り紙絵の手法で制作した。本展では、そのうちの5色のマケットの作例が来日している。これほどに揃ってみられる空間は今後なかなかないだろう。
 原寸大で再現された礼拝堂の空間は、時間の経過で移り変わるステンドグラスの光の反映も味わえる工夫がみごと。また、陶板絵の《聖ドミニクス》《聖母子》《十字架の道行》も楽しめる。

「セクション5 ヴァンスのロザリオ礼拝堂」展示風景から
ヴァンスのロザリオ礼拝堂に関わる下図やマケットの数々。右写真は、マティスのデッサンによる礼拝堂そのもののマケット。こちらも貴重な来日だ。
いずれも ©Succession H. Matisse
左:アンリ・マティス《ステンドグラス、「生命の木」のための習作》1950年 ステンドグラス 62.3×91.5×2cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
右:展示風景
ポール・ボニやガラス工房との協働で生み出された切り紙絵のデザインによるステンドグラスは、背後から照明されて光の効果も感じられる。
左:アンリ・マティス《聖ドミニクス》1949年 筆と墨/紙 310×134.5cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
右:展示風景
ヴァンスのロザリオ礼拝堂の壁面を飾る陶板絵のひとつの下絵は、筆によるデッサンで構成される。右写真手前はマティスによる《祭壇のキリスト磔刑像》ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse
アンリ・マティス《白色のカズラ(上祭服)のためのマケット(正面)》1950-1952年 切り紙絵 126.5×196.5cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
切り紙絵によるカズラのデザインは、緑、赤、紫、白、黒、薔薇色の6色が構想された。本展では5色のマケットが紹介される。
「セクション5 ヴァンスのロザリオ礼拝堂」展示風景から
カズラのマケットの展示は圧巻! ここまで揃うことはなかなかない必見の空間だ。左から白色、緑色、紫色のマケット。
©Succession H. Matisse
「セクション5 ヴァンスのロザリオ礼拝堂」展示風景から©Succession H. Matisse
会場につくられた礼拝堂内部の原寸大の再現空間もみごと。約3分で1日の光の推移が表されて、ステンドグラスを通して床や壁面に反映するさまを体感できる。
©Succession H. Matisse

 線とフォルム、そして色と光。それらの最適なハーモニーを求めたマティスの創作は、多様な表現の変遷のなかで、実は終始一貫している。
 切り紙絵は、その相克を解消するひとつの手段として見いだされたものだ。彼の切り紙絵の作品は、その発見の歓びに満ちているように思われる。そして、軽やかで的確な墨のデッサンとともにヴァンスのロザリオ礼拝堂に昇華した。

ヴァンスのロザリオ礼拝堂(内観) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez

 マティス芸術のもうひとつの貌は、新しいマティス像を示してくれるとともに、これまでみたことのある彼の絵画作品にも新たな魅力を付加してくれるはずだ。

「セクション2 アトリエ」展示風景から
マティスが使用していた絵具パレットと絵具箱がついたテーブル。作品にみられる色彩をパレットに確認するとともに制作するマティスの姿が浮かんでくる。
いずれも©Succession H. Matisse
「セクション4 自由なフォルム」展示風景から©Succession H. Matisse
1951年、日本で初めて、そしてマティス存命中唯一の個展の際に、主催者のひとつであった読売新聞社に寄贈された3点のデッサン(左)や展覧会の図録、作品が表紙を飾った雑誌などの資料も紹介されている。
いずれも©Succession H. Matisse

展覧会概要

「マティス 自由なフォルム」 国立新美術館

国立新美術館
会  期: 2024年2月14日(水)~5月27日(月)
開館時間:10:00‐18:00
     ※毎週金・土曜日は20:00まで
     ※入館は閉館の30分前まで
休 館 日:火曜 ※ただし4月30日(火)は開館
観 覧 料:一般2,200円、大学生1,400円、高校生1,000円
     中学生以下および障害者手帳持参者とその付添者1名は無料
    (要証明書提示)
     ※4月3日(水)~8日(月)は高校生無料観覧日(要学生証呈示)
問 合 せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

展覧会ホームページ https://matisse2024.jp

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