山下清 あるがままの自分に正直に生きよ

アート|2021.8.4
文=別冊太陽編集部

花火だけじゃない! 微細に描き込まれた人物たちに注目!

山下清という貼り絵画家をご存じだろうか? 学園や実家から頻繁に姿を消して放浪の旅に出ていたが、道に迷わないようひたすら線路を歩き、リュックサック一つで自由気ままに日本全国を回った。そこで見た風景を、数ミリの細かい色紙を貼り合わせて表現していたのである。別冊太陽『山下清 あるがままの自分に正直に生きよ』では、清の言葉と作品を紹介している。

放浪中の山下清

汽車道を歩いているところ 鉛筆画145×205 

大きな貼り絵の中の細密描写に注目

山下清の作品と言えば、『長岡の花火』が有名だが、人物もよく見ていただきたい。じっと目を凝らすと、小さな人々の顔がそれぞれ表情豊かで、ポーズも愛嬌があるように見える。

右上から「大東亜戦争」(本誌58頁)、「草津温泉の野天風呂」(2点・82頁)、「上野の地下鉄」(34頁)、「桜島」(77頁)、「観兵式」(38頁)、「金町の魚つり」(68頁)、「トンネルのある風景」(63頁)。

立小便をする子供の様子や、海水浴をする人々の影までも、仔細に表現されている。これらは圧倒的な記憶力で再現され、着物の模様や口ひげなど、見れば見るほど細かい。

清の作品は素朴で温かい雰囲気のものが多いが、その作風とは裏腹にシニカルな感想を日記に残した。

「草津温泉の野天風呂」

――ぼくは草津温泉にいったとき、野天ぶろで小便や大便をしている人が多かったので、そのままはり絵にしたら、式場先生はそれは本当でもやめた方がよいというので、ぼくは小便をしているのだけをのこしてけしてしまった。(『日本ぶらりぶらり』筑摩書房刊) ――

見たままを表現しようとした清と、式場隆三郎(精神科医・清の恩師)との印象深いエピソードである。

――富士山を見る前は もっと美しい山だと思っていたものが 本物を見たら自分の思ったより美しく見えなかった
はじめ見た時は美しく見えても よくばって いつ迄も見ていると 美しく見えなくなってしまう 
何でもよくばって見ていると 美しく見えなくなると言う事がよくわかりました(『裸の大将放浪記』ノーベル書房)――

山下清は、常に現実を俯瞰してみる人だった。

他にも本誌では、おかしみと独創性に満ちた山下清の言葉とたくさんの作品を紹介している。
きょうの猫村さんの作者、ほしよりこによるマンガも4p収録されている。

別冊太陽 日本のこころ291
山下清 あるがままの自分に正直に生きよ
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