新国立劇場バレエ団では、2月の〈バレエ・コフレ〉のトリプルビルに続いて、3月に、ケネス・マクミラン振付の『マノン』全3幕を上演した。
『マノン』が同バレエ団のレパートリーに入ったのは、牧阿佐美舞踊芸術監督時代の2003年(美術:ニコラス・ジョージアディス)。その後、2012年と2020年(美術:ピーター・ファーマー)に再演されたが、2020年はコロナ禍の影響で、5公演中最後の2回が中止になっている。

6年ぶり、充実の3キャストで競演
今回は、主役のマノンとデ・グリューが、小野絢子&福岡雄大、柴山紗帆&速水渉悟、米沢唯&井澤駿の3組交替で6公演が行われ、それぞれの解釈を競った。これまで、主役にアレッサンドラ・フェリやロバート・テューズリー、ワディム・ムンタギロフなど外来ゲストを招いてきたが、今回は、外来ゲストなしで、全て自前のプリンシパル及びゲスト・プリンシパルの主演で公演。これだけでもバレエ団がどれほど成熟してきたか、実績を積み上げてきた跡が窺えるであろう。
今回のステージングには、2003年の公演で、デ・グリューとレスコーの2役を演じたテューズリーが招かれ、演出の充実が図られた。装置・衣裳が、英国ロイヤル・バレエ団提供のジョージアディスのデザインに戻ったこともあり、重厚華麗な印象を受けた。


この名作は、1983年の英国ロイヤル・バレエ団の来日公演以来、日本でもしばしば上演されてきたが、何度見ても言葉を失うほどに哀しくも美しい。改めて、珠玉の名作を生み出したマクミランの手腕に感服するばかりだった。音楽も素晴らしく、ジュール・マスネ作曲のオペラ『マノン』以外の楽曲をパッチワークのように編曲しているにも拘らず、あたかもこのバレエのために作曲されたかのように響くことに驚かされる(因みに、『マノン』が最初にバレエ化されたのは、マスネのオペラに先立つ1830年、アレヴィ作曲、オメール振付であった)。
近年、初演時のレイトン・ルーカスの編曲にマーティン・イェーツの手が加わり、全体の流れがスムーズに改良されたが、今回は、そのイェーツ自身が東京交響楽団を指揮し、気合のこもった演奏が展開された。


初日は小野&福岡。熟練のパートナーシップ
初日にマノンを演じた小野絢子は、既に同役に定評があるが、以前にも増して役の形象を深め、プリンシパルとしての至芸を見た思い。第1幕で、兄レスコーに無邪気に手を振る登場シーンから、その純真さで観客の心を掴み、デ・グリューとの出会いによって、愛を知るも、小悪魔のような移り気な性格で、デ・グリューを翻弄。富への執着から破滅への道を突き進むが、凄まじいほど役を生きていた。


マノンとデ・グリューには、「出会い」から「寝室」、「ブレスレット」「沼地」と4つの主要なパ・ド・ドゥがあるが、小野&福岡ペアの一心同体の淀みない踊りには、二人の感情の起伏がそのまま寄り添う。熟練のパートナーシップの賜物と言えよう。とりわけ、第3幕の沼地のパ・ド・ドゥは、フィギュアスケートのペアを想起させる離れ業の連続で、壮絶さに息を呑んだ。

共演者も充実、演劇的バレエの高い完成度
共演者にも優れた役者を揃え、演劇的な見応えも十分。レスコーの奧村康祐は、マノンとの深い兄妹愛を感じさせ、その愛人の木村優里は妖艶で蠱惑的。第2幕、泥酔状態のレスコーとのデュエットは、続く惨劇の前の束の間の安らぎとして、印象深い。

物乞いのリーダーの水井駿介は高度な回転技をスムーズにこなし快演。ムッシューG.M.と娼家のマダムは、ドラマのキーパーソンとして重要な役どころだが、中家正博と湯川麻美子が時代の空気を醸し出し、舞台に光彩をもたらした。


新国立劇場バレエ団は、昨年のロンドン公演を成功させた後、今回英国バレエの名作『マノン』に挑み、また大きく飛躍。続く今シーズンの演目にも期待したい。
(2026年3月19日〜22日 新国立劇場オペラパレス)

「SWAN―白鳥―」初の舞台化決定!!
2026年9月上旬
今年、連載50周年を迎える『SWAN―白鳥―』が9月に新国立劇場で初の舞台化!
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