弱冠20歳、飛び級でエトワールに。21年間の思いが舞台に結晶


マチュー・ガニオは、21世紀の「パリ・オペラ座バレエ」を代表する、輝けるエトワール・ダンサーだ。
1984年生まれ。マルセイユでバレエを学んだのち、1999年にオペラ座バレエ学校へ転入。2001年にパリ・オペラ座バレエに入団した。両親ともに高名なダンサー、入団当時からサラブレッド・ダンサーとして大きな期待を受けていた。そんな期待に応え、入団から3年も経たない2004年5月20日、オペラ座バレエの最高位である「エトワール」に任命されるという快挙。この夜、『ドン・キホーテ』でバジルを熱演した、20歳になってまもないマチューは、舞台の上で、呆然としたような表情を浮かべ喜びの涙を流した。
恵まれた美しい肢体、夢見るようなロマンティックな表情、そして天性の才能と大きな努力による卓越した技術。なによりも、オペラ座バレエが大切にする 「ダンスール・ノーブル(エレガントなダンサー)」の要である優美な気品をたたえており、立っているだけで華やかな美しさを纏っている。

ヌレエフに代表されるクラシック作品のレパートリーはもちろんのこと、ロビンズやバランシンといった抽象系モダン、プティやベジャールといったドラマティックなモダン、マクミランやノイマイヤー、クランコといったストーリーテラー系の作品、そしてフォーサイスやマクレガーなどのコンテンポラリー作品も踊れる、オールマイティーなダンサー。技術の高さ、表情、表現力……。オペラ座バレエが求めるダンサーに必要な条件を全て満たしたマチューは、300年以上の歴史を誇るこのバレエ団でつよい輝きを放つエトワール(星)となり、パリはもとより世界中の舞台で、多くの人々に感動と興奮を与えてきた。

そんなマチュー・ガニオが、2025年3月1日に引退した。オペラ座バレエに所属するダンサーの定年は42歳。本来なら来シーズンが引退時期なのだが、数年前から早期引退を公表しており、世界中のファンを嘆かせた。チケットは発売と同時にソールドアウト。この偉大なダンサーのラストダンスを観ようと、世界中からファンがオペラ座バレエの本拠地「パレ・ガルニエ(ガルニエ宮)」に集った。
技術と表現力が試される『オネーギン』で圧巻の舞台


彼が自らの引退公演に選んだ作品は、『オネーギン』。ロシアの文豪アレクサンドル・プーシキンの傑作「エヴゲーニイ・オネーギン」を、ストーリーテラーバレエの第一人者であるジョン・クランコが1965年に振り付けた、バレエ史に残る傑作だ。踊りを通してストーリーを語る、つまり技術力だけでは完成せず俳優的要素も求められる、難しい役作り。マチューは、細やかな表情、指先まで神経をゆきとどかせた繊細な動き、流れるように自然なステップなどで、バレエでありながら演劇舞台のような、美しくもドラマティックな踊りを披露した。パートナーのリュドミラ・パリエロをはじめ、脇を固める主要な役は全員エトワール。マチューの最後の公演を、華やかに盛り上げた。


涙をこぼさずにはいられない、切なさと苦悩溢れるラストシーンに続き、出演ダンサー全員が揃ってのカーテンコール。それが終わると、いよいよ、フランス語で、「アデュー(永遠にさようなら)」と呼ばれる引退セレモニーが始まる。

母のドミニク・カルフーニをはじめ往年のエトワールも集結!
大喝采と割れるような拍手に包まれて舞台中央に立つマチュー。頭上にはキラキラ輝く紙吹雪が舞い落ち、会場からは多くの花が舞台に投げ入れられる。目に涙を浮かべながら幾度も挨拶を繰り返し、舞台袖からは、彼と多くの舞台をともにした現役&往年のエトワールたちが次々と登場し、マチューを祝福。フランスを代表するダンサーであった母親のドミニク・カルフーニら家族も舞台に立ち、熱い抱擁。いつまでも止むことのない歓声の中で、マチューは、オペラ座バレエに別れを告げた。
オペラ座バレエ史に名を残すであろう、偉大なダンサー。マチュー・ガニオは、同じ時代に生きられたバレエ愛好家に、多くの喜びと幸せをもたらしてくれた。




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