地図と写真でみる半藤一利「昭和史1926–1945」

カルチャー|2021.11.24
平凡社 編集部

それにしても何とアホな戦争をしたものか。この長い授業の最後には、この一語のみがあるというほかはないのです。ほかの結論はありません。

                    半藤一利『昭和史1926-1945』より

歴史探偵の半藤一利さんは、「日本人はなぜ戦争を繰り返したのか」をただ一心に問い、昭和史の実証研究に立ち向かい続けた。わけても、若い編集者に向け授業形式で易しく語り下ろした『昭和史1926‒1945』は、戦前の日本がどのような経緯をたどって戦争に突入し、敗戦を迎えたのかを後世に伝える唯一無二の好書として、2004年の刊行以来、幾度も版を重ねている。

歴史研究者の著作とは異なり、その軽妙洒脱な語り口のおかげでたやすく読み進められ、事件の経緯なども容易に理解できる。しかし、いかんせん登場する人物や地名が多いために、複雑な関係性を思い描くのがなかなかに難しい。もとより戦争は膨大な細部を持つ情報の集積である。そこで、刊行後に現在までに判明した新事実(主に英米の情報公開制度による)などを補完し、正確さは量に比例するという信念のもと写真や地図や図表で半藤さんのテキストを立体的に肉付けした。

『昭和史1926-1945』を読んだことのある人も、これから読む人も、ぜひこの副読本を手引きに、併読してみてほしい。読後、あの戦争について、いかに知っているつもりで知らなかったということが「わかる」だろう。そしてこの国があの戦争と地続きで進んでいることに改めて思い当たり、襟を正さざるを得なくなる。


君側の奸(天皇とその周辺)

陸軍の若手将校たちが、天皇の周囲にいる特権階級を「君側の奸」と呼んで憎悪を増幅させていった結果が、のちの二・二六事件へとつながっていったという。

軍閥分布図

さまざまな軍閥が割拠する1920年代の中国。やがて蒋介石を中心とした広東省の国民党軍が北伐を開始、張作霖を首領とする奉天派を破って北京を占領する。
その時、日本の関東軍が動いた――。

ミッドウェー作戦図

真珠湾奇襲作戦でアメリカ太平洋艦隊の基地を叩き、多大な戦果をあげたものの肝心の空母機動部隊を逃した日本海軍は、アメリカ機動部隊を誘い出し一気に叩こうという「ミッドウェー作戦」を実施し、大敗した。

地図でみる日本の損失

1946(昭和21)年に日本地圖株式會社が、復員庁第1復員局の資料を
 もとにつくった地図「日本陸軍戦力喪失一覧図」を今に再現。日本が先の大戦でどれだけの損失を被ったのかがわかる。

『地図と写真でみる 半藤一利「昭和史 1926‒1945」』(平凡社) 1980円(+税)

 半藤一利氏のベストセラー『昭和史』の副読本的地図帳。豊富な地図群と、ひと目でわかる人物相関図や貴重な写真が満載!


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