マリアネラ・ヌニェス(オーロラ姫)、ワディム・ムンタギロフ(フロリモンド王子) 撮影・鹿摩隆司

豪華ゲストに沸いた牧阿佐美バレヱ団『眠れる森の美女』

カルチャー|2024.1.18
文=小野寺悦子(編集・ライター)

マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ 撮影・山廣康夫

 牧阿佐美バレヱ団が、この冬『眠れる森の美女』を全幕上演。2023年は『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』とチャイコフスキー三大バレエをラインナップに揃え、その第二弾としての開催である。
 現在同団で上演されている『眠れる森の美女』は、テリー・ウエストモーランドの演出振付により1982年に初演を迎えた名レパートリー。今回3年ぶりの上演にあたり、主役のオーロラ姫とフロリモンド王子には、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、マリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフをゲストに迎えている。

マリアネラ・ヌニェス 撮影・山廣康夫

 ヌニェスのオーロラ姫はたおやかで匂い立つような美しさ。三大バレエのなかでも極めて難しいとされるオーロラ姫だが、完璧なポジションと完成されたラインはまるでクラシック・バレエのお手本のよう。上半身を優雅に使い、盤石の技量に裏打ちされたまばゆい笑みで王子たちの視線を釘付けにする。

マリアネラ・ヌニェス 撮影・鹿摩隆司
ワディム・ムンタギロフ 撮影・山廣康夫

 ムンタギロフもまた誠実かつチャーミングな王子で魅了。しなるジャンプで舞台を大きく使い、安定感溢れる回転で目を奪い、隙のないサポートでダンスール・ノーブルの本領を発揮する。2人が寄り添うと求心力は高まり、オーラはひときわ輝く。フィニッシュダイブまで一切の隙なく、スターの風格を感じさせた。

ワディム・ムンタギロフ 撮影・鹿摩隆司

 脇を固めたダンサー勢の活躍も目立った。菊地研のカラボスは当たり役で、妖艶かつ怪しげな気配を振り撒き存在感を発揮。清瀧千晴の音楽性が光ったサファイアの精、伸びやかな水井駿介の金の精、身体性が際立つブルーバードの大川航矢と可憐なフロリン王女の阿部裕恵と、いずれも主役クラスの豪華キャスティング。ウエストモーランド版は古典の原典を忠実に継承した正統派作品で、様式美を大切にその醍醐味を体現したダンサーたちが頼もしい。

菊地研(カラボス) 撮影・鹿摩隆司
清瀧千晴(サファイアの精) 撮影・鹿摩隆司
水井駿介(金の精) 撮影・山廣康夫
阿部裕恵(フロリン王女)、大川航矢(ブルーバード) 撮影・山廣康夫

 ゲスト2人はまた最後まで求心力を絶やさず、クライマックスまで駆け抜ける。カーテンコールはスタンディングオベーションに沸きかえり、成功裡に終えた舞台と会場の感動を伝えていた。

撮影・鹿摩隆司
撮影・鹿摩隆司

チャイコフスキー三大バレエ第三弾『くるみ割り人形』上演!

 チャイコフスキー三大バレエの第三弾として、2023年末に『くるみ割り人形』を上演。3組6キャストが日替わりで主演を務め、小池京介が王子役で全幕主演デビューを果たした。

『くるみ割り人形』小池京介(王子) 撮影・鹿摩隆司

『くるみ割り人形』上中穂香(金平糖の精)、小池京介(王子) 撮影・鹿摩隆司

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