『シンデレラ』初日公演 柴田実樹×早川侑希

第36回「清里フィールドバレエ」満天の星、山、森に包まれた、唯一無二の野外バレエ公演

カルチャー|2025.9.2
文=菘(すずな)あつこ(舞踊評論家、フリージャーナリスト) Photos by Haruko Kayashima

 バレエシャンブルウエストの代表、今村博明と川口ゆり子がフランスの野外バレエのガラ公演に招かれて、自然と共存する野外バレエに強く魅せられたことから「日本にも!」と立ち上げたという「清里フィールドバレエ」。

『シンデレラ』

全幕公演は『シンデレラ』と『ジゼル』

 36年目の今年も、7月26日から8月9日にわたり、『シンデレラ』、『ジゼル』、「Field GALA」と、3つのプログラムで、13公演が清里高原萌木の村の特設野外劇場で行われた。筆者はCプログラム「Field GALA」を7月30日に鑑賞した。
 フィールドバレエの魅力は舞台だけではない。高原である清里に降り立つと、近年はだいぶ暑くなってきてはいるものの、平地に比べると随分過ごしやすい。そして、萌木の村のなかのお店やレストラン、工房などは、可愛らしいものでいっぱい。バレエをデザインしたグッズを置くお店も多く、この一帯がバレエのフェスティバルのよう。

『ジゼル』 ゲストの小野絢子×福岡雄大

バレエシャンブルウエストの魅力満載のガラ

 19時30分の開演の頃には、日も暮れて、日中よりずっと涼しい。いよいよ開演。最初の演目は『シルビア組曲』だ。シルビアを柴田実樹、アミンタを江本拓が踊った。柴田は手足の長い恵まれたスタイルを活かしての、ちょっとおしゃまな幸せ感が広がるような踊り。一方、江本は経験を重ねた落ち着きを感じさせ、コール・ド・バレエも満足できるレベルだった。

『シルビア組曲』

スターダンサー・福岡雄大の振付作品に惹きつけられる

 続いては福岡雄大が昨秋、シャンブルウエストの100回記念の定期公演のために振り付けたコンテンポラリー『un poema de amor』。中心的な役割を担う、白い衣裳の男性は鈴木諒羽。時に決意をにじませる強い表情を見せ、真摯に人生を歩むような表現が、振り付けた福岡の姿と重なる気がした。また、彼だけでなく、他の登場人物も“歩む”動きに強い集中度が滲んだ。鮮やかな激しいダンスも見応えがあるが、静かに歩む時に、よりグッと惹きつけられる、そんな作品だった。

『un poema de amor』

バレリーナ芸人・けっけちゃん、太陽のような笑顔!

 『ラ・フィユ・マル・ガルデ』を踊ったのは、バレリーナ芸人“けっけちゃん”こと松浦景子と土方一生。松浦は、ちゃんとテクニックもあるバレリーナなんだとあらためて。奇をてらわずに、でも持ち前のとびっきりの笑顔で楽しませてくれた。

『ラ・フィユ・マル・ガルデ』

『ワルプルギスの夜』~神話の世界がリアルに立ち昇る

 そしてラストは、イルギス・ガリムーリンと成澤淑榮が演出振付を手掛けた『ワルプルギスの夜』。本物の樹々の間から現れる登場人物たちを観ていると、現実に悪魔や魔女や妖精たちがそこで盛大な酒宴を行っているような気分になってくる。この場所だからこその感覚。堂々と場を取り仕切る祭司の逸見智彦、さらに高度なテクニックをふんだんに披露し盛り上げたバッカンテの川口まりとサチロスの藤島光太が圧巻。ニンフの鈴木愛澄、亀田直子、神谷麻依の優しく清らかな踊りも良かった。

『ワルプルギスの夜』

 「ここでこの作品を観ることができて本当に良かった」としみじみしていると、盛大な花火が。花火大会の興奮も味わいながら余韻を楽しんだ。(7月30日 清里高原萌木の村 特設野外劇場)

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